メンタルヘルスについて(メンタル不調、対策、簡易ストレスチェックの活用) | 企業の雇用と健康管理サポート

1.メンタルヘルスの不調

 

労働者が50人以上いる事業所では、2015年からストレスチェックの実施が義務付けられました。厚生労働省の調査(2018年労働安全衛生調査)によると「現在の自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」という労働者は全体の58.3に上っています。

 

 

メンタルヘルスが不調になると、事業所側は3つのリスクを抱えると言われています。それが「労働者の離職」「業務パフォーマンスの低下」「事故やトラブルの増加」です。

 

労働者の離職率が高まれば当然、新たな人材を採用するコストが増加していきます。離職率が高ければ学生などの求職者からも敬遠されやすくなり、優秀な人材の確保も難しくなっていくでしょう。またネガティブな要因による離職者が出ることは、職場の士気が低下することにもつながります。

 

大手企業と異なり中小企業の場合は、職員一人が抱える仕事の役割が大きくなることから、メンタルヘルスが不調になれば、職員の長期休暇や退職は企業活動における生産性に直結し悪循環を招き、結果として業績悪化につながることが懸念されます。

 

健康経営では、メンタル不調の予防策に重点を置き、従業員やその家族も含めた広い視野で職員のパフォーマンス向上を目指した働き方を意識した施策を戦略的に実施することから、最近では企業規模を問わず理解を示す経営者も増えつつあります。

 

 

 

2.メンタルヘルス対策

 メンタルヘルス対策で重要なことは、1次予防から3次予防までの予防策の実施です。

 

① 1次予防

1次予防とは、メンタル不調の未然防止と環境改善を言います。まず労働者が自分のストレス状況について気付くことを促し、対処法のアドバイスや職場環境の改善を通してメンタルヘルス不調となることを未然に防ぐことが重要です。そのためには適切なセルフケアが大切で自らストレスに気付き対処することが求められます。休養や十分な睡眠を取りストレスの蓄積に注意を払うことを普段から心掛ける必要があります。

また、事業者が労働者の職場環境を改善し、ストレスが発生しにくいような状態となれば、必然的にメンタルヘルス不調に陥る人の数を減らすことができます。

 

② 2次予防

2次予防とは、メンタルヘルス不調を早期に発見し精神疾患の発症を未然に防ぐ適切な対応を行うことです。

メンタルヘルス不調に陥った人に対しては、できるだけ早い段階で支援を行い、深刻な状態にならないように対策を講じることが大切です。仕事でのストレスによりメンタルヘルス不調に陥ってしまった場合は、相談窓口を設置して産業医や保健師等の適切なアドバイスに基づくケアも有効対策です。また、場合によっては、業務量や業務内容などを配慮し就業上の措置と組み合わせた対応により回復することもあります。そのためには上司や同僚の気づきも大切で、普段から部下や同僚の変化に気付くためにも有効なコミュニケーションを保つことが重要です。

 

③ 3次予防

3次予防とは、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する取り組みを言います。

メンタル不調者が職場復帰した場合には、医師の意見を踏まえ、いつ、だれが、どのように支援を行うのかなど(医師・産業保健スタッフ等の連携も含む)の支援体制を事前に決定しておくことは重要です。

主治医の判断で必要に応じ「リハビリ出勤」が必要な場合は、管理者は主治医の意見などを参考に職員と面談して業務や勤務時間などを配慮して、職場復帰を支援することは有効な取り組みです。

※リハビリ出勤とは、精神疾患や身体疾患などで、欠勤や休職をしてしまった従業員が復職に 先立ち、いきなりフルタイムで働くのではなく、前もって少しの時間だけ勤務することをいいます。

 

3. 簡易ストレスチェックの活用

セルフケアで活用できるツールとしては、簡易ストレスチェックを活用することをお勧めします。最近では公的機関や医療専門分野で広く活用され、web上でも容易に自己診断できるようになりました。ここで紹介する簡易チェックリスト(桂 村上版)は、A4サイズで30問の質問に答え5分あればだれでも利用できるストレスチェックシートです。多くのクリニックや心理研究などで利用され信頼できるツールです。

このシートの結果を参考に適切な対応を早期に行うこが1次予防や2次予防につながります。また復帰間もない方も不調を訴えた場合にしようすれば3次予防にも有効な取り組みとなります。