一般的には、カロリー摂取量の半分からそれ以上が炭水化物由来。
よって私たちのメインエネルギー源が炭水化物。
一番効率よく消化され、代謝され、エネルギーとなる栄養素。


炭水化物は、一番小さな糖である単糖類や、その単糖類が重合して、複数連なり、多糖類になったもの。
その結合の名前が、α1→4グリコシド結合や、α1-6グリコシド結合など。
炭水化物の消化とは、多糖類を単糖類になるまで、その結合を切り離していく過程。


食べ物の中に含まれる大半の炭水化物が多糖類、つまりはでんぷん (starch)。
でんぷんはアミロースとアミロペクチンがあり、どちらも単糖の一種であるグルコースが何千何万と連なったもの。
でんぷんの多くは穀物やお芋などの野菜に含まれる。

残り半分の大半は二糖類、つまり単糖類が二つ結合したもの。
二糖類の中ではお砂糖である、ショ糖 sucrose が一番多い。

残りの単糖類であるグルコースや果糖は、はちみつや果物に含まれる。


栄養素は消化器官の小腸を構成する細胞達 (Enterocytes) から吸収されて、血液を通って体中の細胞に運ばれる。
この小腸の細胞達は、単糖類しか吸収出来ず、多糖類を吸収出来ない。
その為、食べ物が口の中に入り、そこから始まる消化器官を通って小腸に辿り着くまでに、多糖類は全て単糖類まで結合を切り離して分離されなければならない。


炭水化物の消化に携わる酵素

1.唾液中のアミラーゼ
2.膵液のアミラーゼ
3.小腸の吸収上皮細胞の刷子縁の細胞膜中の二糖類の為の酵素

 

 

 

炭水化物の消化のスタートポイントが口の中。
かみ砕かれて細かくなって、唾の中の液体に溶かされて、唾の中の酵素が加水分解を行って、多糖類を小さな多糖類にしていく。
因みに、口の中に食べ物が存在している時間はとても短いので、二糖や単糖までは消化できず、あくまでも小さめの多糖 (Dextrin) になるのがせいぜい。

口の中(唾の中)に分泌される酵素の内、炭水化物に働くのは、α-Amylase。
この酵素は多糖類の中の、単糖類と単糖類を繋いでいる α1→4 結合を狙い撃ちして分離する。


この反応は、食べ物が喉を通り、胃の中に到着して、胃から出ている胃酸の影響により、食べ物のpHが下がり酸性になるまで続く。酸性になると炭水化物の消化が止まるのは、α-Amylaseが酸性では働かなくなる為。
よって、酸性の環境である胃の中では、胃液の中の塩酸による腐食は起こるが、

これ以上α-Amylaseによる炭水化物の消化は行われない。

また、胃から分泌される消化液に、炭水化物を消化する他の酵素も特に含まれない為、胃の中では炭水化物の消化そのものが行われない。


食べ物が十二指腸 (duodenum) に入ったら、膵臓から消化酵素(膵酵素)や炭酸水素塩 (bicarbonate) を含む膵液が分泌される。炭酸水素塩は、胃で酸性になった消化物をアルカリ性に戻してくれる。膵液に含まれる α-Amylase にとってはアルカリ性の環境がベスト。

そうして、多糖類であるアミロペクチンやアミロースは、小さめの多糖類であるオリゴ糖や、三糖のマルトトリオース、二糖の麦芽糖 (maltose)になり、
オリゴ糖やマルトトリオースは、α-Amylaseによって麦芽糖にまで細かく分離される。
ここまでは、全てα-Amylaseによる、α1→4 結合の分離。


他の結合タイプはこの酵素α-Amylaseでは分離出来ない。
例えばアミロペクチンはα1-6グリコシド結合でできた枝分かれを多数含む。
α-Amylaseはこのα1-6結合を分離出来ず、そのままに残してしまう。
(このα1-6結合が残されたオリゴ糖がlimit dextrins)
このα-Amylaseには処理できない α1-6結合を分離してくれるのが、α-dextrinase (a.k.a. Limit dextrinase or isomaltase)。


また、二糖の分離はそれぞれの種類によって、違う酵素によって行われる。

  • ショ糖 (Sucrose: glucose + fructose by α1→2グリコシド結合) - スクラーゼ (Sucrase)
  • 乳糖 (Lactose: galactose + glucose by β1-4グリコシド結合) - ラクターゼ (Lactase)
  • 麦芽糖 (Maltose: 2 glucose by α1→4グリコシド結合) - マルターゼ (Maltase)
  • トレハロース (Trehalose: 2 glucose by α1-1グリコシド結合) - トレハラーゼ (Trehalase)


α-Amylase以外のこれらの特殊な酵素は、小腸の表面を形成する細胞達の細かい襞、微絨毛の表面にくっついている。
なので、二糖の消化はあくまでも小腸の細胞膜の表面上で行われ、出来上がった単糖はそのまま小腸の細胞膜を通り、その細胞を通り抜けて血中に入り、血液に乗って体中の細胞まで運ばれて、エネルギー源として利用される。