最近、書店で手に取るまで忘れていた人ですが、この短編集の『モルグ街』を読んで、遥か昔のおぼろな記憶が溢れるように甦って来ました。
のちの世代の探偵小説や怪奇小説の原型を見ることのできる短編小説も面白かったですが、『アナベル・リイ』、『大鴉』、『エル・ドラド』などの名詩の作者としても忘れることのできない人です。ポオは驚くべき科学的知性の持ち主で、緻密に効果を計算した上の仕事でありながら、その純粋な詩心は多くの読者を虜にする。バイロンにも見劣りしないロマンティシズムや、音楽性、神秘性があり、言葉と韻律を通して、非現実の世界にのみ存在しうる美に浸らせる力を持っています。
残りの短編も久しぶりに読んでみます。