【side A】
「おめでとうございます。」
楽屋の中の呟き声に、ドアノブに掛けた手を思わず止めた。
オレの耳はどんなに小さな声だって拾う事が出来る。それがニノちゃんの声ならね。
「ありがとうございます。」
翔ちゃんのふざけてるけど落ち着いた声。
どや顔して口角が上がってるのが目に浮かぶよ。
「交代しませんよ?」
あ~もう!そんな事言わないの!
ベスアの時だって一番心配してる癖に、本当に天の邪鬼なんだから。
…ま、そこが可愛いんだけど~!
だいたいニノちゃんは考え過ぎなの。
“嵐“ の未来とか、翔ちゃんの未来とか。
そんなこと気にしないでドーンとぶつかっちゃえば良いのに。
「ふは!ジャニーさんに怒られるぞ?」
ん?何の話?
「 “櫻宮SK“ もやる?」
お?それで打ち合わせやなんかで急接近しちゃえば良いじゃん?
「俺なの?!乗り気じゃないのに?」
え~?翔ちゃんノリノリだったじゃん!
「 “乗る気“ は満々だけどね…チュッ」
今の、チューの音だよね?
チューの音したよね?…///
…ってか、 “乗る気“ って何?
「…いやん…」
え?なに?
ニノちゃん、何されてんの?!
………まさかだけど…乗ら…れ…てるの?
ダメダメダメダメっ!それは早すぎるよ!
「… “いやん“ って…どうすんの?相葉くん…困ってるよ?」
そうだよ、オレ困ってるよ?…ってかこれ、バレてる? ニノちゃん心配で聞き耳立てちゃってるの、オレってバレてる?
「バカップルだから、しょ~がない!」
ニノちゃん、何言ってんの?! え?もうカップルだったの?知らないのオレだけ?
「もう…煽るのやめてよ」
そうだ!そうだ!
ニノちゃんのうるうる上目遣いの前には誰も勝てやしないんだから、翔ちゃんがオオカミになっちゃう前にドアを開けなきゃ!
ニノちゃんの純潔はオレが護る!!
ダンダンダン!と力いっぱいドアを叩く。
「は~や~く~開~け~ろ~っ!!」
カチャ!
バタン!
「ニノちゃん!大丈夫っ?!」
一直線にニノちゃんの前に駆け込み、全身をくまなくチェック。
あ~もう!!
ほっぺは真っ赤だし、身体は火照ってるし、瞳はうるうるだし、なんだかフワフワポヤポヤ力が抜けてるし…翔ちゃん、いったい何したんだろ?!
「何もされなかった?」
コクコク頷いているニノは、耳たぶまで真っ赤!食べちゃいたいくらい可愛い!!
「翔ちゃんっ!」
振り返ると翔ちゃんは、まんまるおめめのキョトン顔。
「はい!!」
“はい“ じゃないでしょ!!
「おうちでやってよね!ここ、楽屋!」
「「え……」」
…オレだって、こんなとこでイチャイチャ見せつけられちゃ、いろいろ大変なんだから!
…やっぱ二人を応援すんのやめとこっかな?
fin.