「験なきものを思はずは一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし」
お酒を愛した大伴旅人の歌でありますが、彼は飛鳥奈良時代の人物です。
当時はまだ中国より穀物の酒の文化が伝わって参りましたところ。
新しい飲み物だったのですねえ。
それまで日本人は山葡萄などの果実を原料とした果実酒を飲んでおりましたが、中国より雑穀や芋を口に含んで噛んでから、唾液で澱粉を糖に分解し発酵させるという作り方が伝わって参りました。
口噛ノ酒という、アニメ「はじめ人間ギャートルズ」や、映画「君の名は」にも登場致しました有名なお酒の作り方です。
この時代にはあの須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇を倒したというお話が古事記によって描かれておりますが、その中で八岐大蛇に飲ませた酒は「八塩折之酒(やしおおりのさけ)」と表記されており、“八”は沢山、“塩”は熟成した醪を搾った汁、“折”は繰り返す意味と考えられ、その字から察するに蒸米と麹を使って何度か繰り返し発酵させた酒ということになります。
この時には既に、日本酒の原型のような酒造りが為されていたのですねえ。
更に朝廷に“酒部(さかべ)”という酒造り専門の部署があり、これは後の平安にも“造酒司(みきのつかさ)”として受け継がれております。
そんな、日本酒の走りの酒を飲み、歌を詠んだ大伴旅人。
態々“濁り”と詠むことから、清く澄んだ酒もあった筈ですので、この方が濁りのお酒がお好きだったこと。
それから冒頭の歌の外にも沢山のお酒に関する歌を遺していらっしゃり、泣き上戸であったことも窺い知ることが出来ます。
特に医療に関わってもおらずこの世界の状況に前進を与えられない私は、後退にならぬよう自宅へ引き籠り、彼と同じく大腕を振って美味い酒を飲みますぞ。
私は彼とは違い、褒め上戸の類です。
酔って参りますと、何でも褒めます。
春の初めに購入致しました、あの山椒を今年もご馳走になる日が参りました。
揚羽蝶に先駆けて、頂きます。
キッチンに上げますと、これくらいの大きさです。
良き葉を落とします。
茎の部分を取ると、一気に少なくなったように見えます。
擂鉢で潰し、西京味噌ときび砂糖と酒と出汁、味醂で木の芽味噌を作り、出汁醤油で下茹でしておきました掘りたて筍と和えます。
息子が前日残してくださいましたお刺身を一緒に並べ、満を持して雁木をON。
山葵はわさビーズです。
槽出あらばしり、肴も最高でうんまいですなあ。
折角ですので、私も一句。
籠水木 流行り知らずに 神水礼賛
籠状になった花水木はこの時期でしか見られませんので、季語。
籠っている人々とかけております。
流行りとは現在世界的に流行している伝染病、それをまだ経験せずに、美味い酒を讃えて飲んでいられるこの幸せよという意。
GWを一歩も外出せず過ごし、平日に漸く食材確保の為お買い物へ参りました折、レジの女性に「お久しぶりですね!髪、伸びましたね」と言われてしまったのですが、襟足が確かに。
出掛けませんと鏡も見ませんので、気付きませんでした。
切りますかねえ。