翁の科白 |  青行燈

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  本業絵描き。モデルと役者をしております。
  数学の家庭教師とハウスキーパーのお仕事は指名のあった日に。
  23歳大学生の息子と二人暮し。
  必要なものは自分で作ってしまう方。
  日本酒、食器、手拭い、妖怪、恐竜、昆虫、お花好き。
  

朝の会話。

私 「今夜はビーフシチューに致します」

息子「えー!そんなんいいわ~」

私「ん、野菜スープか味噌汁が良いですか」

息子「味噌汁!もう味噌汁と白ご飯だけあったらえーわ~」

 

 写真は一個百円の大きな林檎。

私「八十年程生きた翁の科白でありますなあ。『若い時分はイタリアンやらフレンチやら色々食べたけど、あんなもんそううまない(そう旨くはない)。味噌汁と白飯が一番や』、と」 

息子「うひひ」

 

上の林檎を煮ております。

 

因みに科白と台詞の違いとは何ぞやというお話を。

どちらも元々はお芝居の折に役者が話す言葉を指しましたが、「台詞」は日本で作られた言葉で、せりふのみを指します。

一方「科白」の方は中国から来ました言葉で、役者の仕草を指す「科」と、告白、白状など、声に出てしまうような言葉を指す、「白」が合わさった単語で、ですから「科白」の方は仕草や役者が出す空気を含んだものを指します。

これを日常生活、文章の中で使うとすると、「ああ彼女が言ったこれは科白だな」という考えが頭に浮かび、とても濃やかな観察眼や分析能力が磨かれるやもしれません。

相手のことを熟視するということは嫌がられることも多い日本ですが、殊愛する方への視線とすればなかなかに新しい発見があるやもしれませんぞ。

 

そうこうする内に出来上がりました。 

いつもの林檎のコンポートです。 

味噌汁と白飯だけでイイと言っておりました筈の息子もこのお皿半分を食べました。