空の戦を語る |  青行燈

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  本業絵描き。モデルと役者をしております。
  数学の家庭教師とハウスキーパーのお仕事は指名のあった日に。
  23歳大学生の息子と二人暮し。
  必要なものは自分で作ってしまう方。
  日本酒、食器、手拭い、妖怪、恐竜、昆虫、お花好き。
  

これまでの私が語っておりましたプラモデルや模型を見ますに、私が飛行機や戦艦が大好きなことはお運び下さった方ならご存じでしょう。

その私が、最近話題の零戦映画、永遠の0の話を一切しませんでしたのは、空き時間を利用して小説を読んでいたからに他なりません。

百田尚樹さんのデビュー作ということで、プロとしては文章が稚拙ですが、零戦を描くに必須のスピード感が御座いますし、人物設定も現代日本人が感情移入しやすいようにしていて、何より文章が分かりやすいです。

それにしても、ライターとしては長く、私も実は密かに役者の方のお仕事でお世話になっている方なのであまり言いたくはありませんが。
同じ接続詞や副詞が続いたり、一人称で書いていたシ―ンで急に三人称を挟んできたりと、文章に乱れがあるのは何故でしょうか。
お忙しい身の合間に書かれたでしょうけれど、デビュー作品だというものを勿体無いことです。

惜しい話はこれくらいにして。
物語の構成としては流石長年番組制作に関わっていらっしゃっただけあるなといった素晴らしい造りです。

初めに、やれば出来るが今はその羽を閉じたままの青年主人公を描写し、読者に感情移入を促しております。

それから今の価値観でならば、大変魅力的な人物を。
これは青年の祖父なのですが、戦中での価値観から扱き下ろされた彼を、外側から丁寧に語らせ、後に少しずつ彼の心情が周りの人物達の言葉によって零れ出て参ります。

一つの話を終えると、戦中描写から現代の描写へと戻ります。
それは、激しく辛い感情に浸っていた読者に、きちんと休憩をとらせることになります。
この造りは、テレビ番組や映画でも多用されます、ほっと一息の間です。

この間。
青年が祖父をどう捉えたのかは多く語られません。
それ故に、余計に深い畝りとなって読者に伝わり、延いては読者に祖父への愛情を感じさせる程になって参ります。

終戦60周年を狙って書いたことがわかりますから、この機会に戦争を知らない若い方に読んで頂くのを考慮したのでしょう。
長時間息を詰めて読むことに慣れていない読者も、この配慮で楽に読み進めることが出来、登場人物達の心情変化を汲み取ったり読者自身の気持ちの整理も出来ると感じました。

続く