2025年11月6日

 

 10月27日参政党が参議院に「国旗損壊罪」を創設する刑法改正案を提出した。

 その条文は次のとおりである。

 「第94条の2 日本国に対して侮辱を加える目的で、日本国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処する。」

(我が国には国旗のほかに国章にあたるものはないので、「その他の国章」は空規定と思われる。外国の国旗その他の国章の損壊等を罰する既存の条文をそのまま引き写したことによる単純ミスであろう。)

 

 さて、「日の丸」に親しみを感じ、あるいは崇敬の念をいだく多くの国民が存在することを考えれば、彼らに不快、嫌悪を感じさせる「日の丸」の損壊等は、礼儀として控えられるべきだとは思う。

 しかし、それを刑法犯として処罰することについては、次のような理由から賛成できない。

 

1 「日の丸」が一般国民の間に普及するようになったのは、我が国が近代国家として世界政治の場に登場するようになった明治時代以降のことである。長い歴史を持ち、世界に誇るべき内容を有する日本文化全体を象徴するものとしては、「日の丸」は軽量で、上すべりの感があり、不十分で、考えにくい。

 

2 近代国家としての日本を象徴する「日の丸」は、近代国家として成長発展を遂げた日本を象徴するのとあわせて、「日の丸」が戦時に多く活用されたこと等を背景として、国民統治(支配、強制)、軍国主義という日本の否定的側面を象徴する性格をも帯びている。

 

3 「日の丸」を特定の政治的主張のシンボルとして使用する個人、組織がある。それらに対する批判がそのシンボルに向けられることは十分にありうることである。それを封じる効果を「国旗損壊罪」の創設が持つおそれがある。

 

4 会場正面に掲げられた「日の丸」に登壇する人間が頭を下げるという偽善的慣習がいつの頃からか一般化している。そのような悪しき慣習が「国旗損壊罪」の創設によって強められ、半ば義務化されるようなこととなることを懸念する。

 

5 すでに犯罪とされている外国の国旗等の損壊等(公訴には外国政府からの請求が要件)は、我が国の外交に支障を与えるおそれがあるのに対し、「日の丸」の損壊等は人々の感情を害するにとどまり、それによる損害を想定することができない。

 

 報道によれば、かねてより「日の丸」の損壊に対してそれを罰しようとの動きはあり、自民党、維新の会には同調の動きもあるとのことなので、刑法改正案は成立するかもしれないとのことである。寒心に堪えない。