2025年8月24日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第620回です。

 ウクライナ、パレスティナ詠、俳句に1、短歌に4ありました。反トランプ詠はありませんでした。後ろに掲げます。

 

 

【俳句】

 

 

忘れるに・十分遠し・敗戦忌 (伊勢原市 合志伊和雄)(長谷川櫂選)

 

 

(めずらしい反語的表現。)

 

 

人想ふ・とき風鈴の・遠く鳴り (伊勢原市 合志伊和雄)(大串章選)

 

 

(偶然前句と同一作者。となると戦死者の鎮魂句とも読めてくる。)

 

 

蝉落ちて・寿命なれども・翅ふるう (鎌倉市 関田二郎)

 

 

(蝉はめずらしく、屍を晒し、静かに成仏しない生き物だ。)

 

 

至尊無謬・ええじゃないかと・盆踊り (奈良市 押田六蔵)

 

 

(民族別能天気順をつけたら、きっと日本人はトップクラスだろう。)

 

 

静かなる・炎天餓死の・地へ続く (取手市 うらのなつめ)(小林貴子選)

 

 

(パレスティナ詠)

 

 

【短歌】

 

 

白いご飯・食べて母子で・海へゆき・死なずに帰つた・戦後のある日

                   (生駒市 辻岡瑛雄)(川野里子選)

 

 

(短歌に残さねば埋もれてしまうこと。)

 

 

シートベルト・しろとブザーの・鳴り止まず・助手席に置く・巨大な西瓜

            (羽咋市 北野みや子)(川野里子選)(佐佐木幸綱選)

 

 

(AIにもユーモアのセンス。)

 

 

午前二時・頬を蹴られて・目が覚める・我が子は今日も・宇宙飛行士

                     (柏市 伊藤智紗)(川野里子選)

 

 

(宇宙飛行士風のパジャマを着せたい。)

 

 

人の群れが・駅からビルへ・流れゆく・誰のものでも・ないスピードで 

                     (東京都 粟生翠)(川野里子選)

 

 

(日本人の右傾化の進行とも感じられる。)

 

 

出撃の・30分前の・写真には・信念つらぬく・若者の笑み 

                     (宇陀市 吉岡節子)(高野公彦選)

 

 

(そんな単純な!)

 

 

帝国を・貶めんとする・歪曲と・信じたるまま・友は逝きけり

                         (佐賀市 塩田一隆)

 

 

(「南京大虐殺」のことだろう。不幸な生涯だった。)

 

 

カマキリは・ミンミンゼミを・襲いたり・長くはなきを・かく終わるとは 

                        (庄原市 加田二三麿)

 

 

(天は下々のことには無関心である。)

 

 

野草摘み・「たくさん食べましょう」と言う・ガザの瓦礫に・子を抱く母は 

              (観音寺市 篠原俊則)(川野里子選)(高野公彦選)

 

 

(パレスティナ詠)

 

 

安青錦(あおにしき)・物の見事な・「内無双」・母国は戦火に・包まれながら 

                    (川崎市 宇藤順子)(高野公彦選)

 

 

(ウクライナ詠)

 

 

安青錦・故国の力・乗り移り・粘り強さは・只者にあらず 

                  (名古屋市 立川哲夫)(高野公彦選)

 

 

(ウクライナ詠)

 

 

天国に・行けば食べ物・あると言う・あばらの目立つ・ガザの子悲し

                 (川崎市 赤木不二男)(高野公彦選)

 

 

(パレスティナ詠)