2025年7月18日
人間の言語習得と生成AIの大規模言語モデルの言語習得は本質的に違うのか、違わないのかというチャットGPTとのやり取りです。
チャットGPTは「違う」と言いたいようなので、後半で「同じ」ではないかと反抗してみました。
キーは「意味とは何か」「理解とは何か」ということのようです。
三島由紀夫が、誰でも知っている一般的なある植物について、言葉では知っていても
実物を知らなかったというエピソードを、ドナルド・キーンが語っていたことが思い出されます。
【こちらからの質問②】
LLM(生成AIがその基礎に置いている大規模言語モデル)は幼児が言語を習得するのと同じ原理のものなのでしょうか?
【ChatGPTの答】
結論から申し上げますと、LLMと幼児の言語習得は似ている部分もありますが、根本的には異なるプロセスです。
○共通点
1. 大量の言語データから学ぶ
LLM(たとえばChatGPT)は、大量のテキストデータを使って言語のパターンや文脈を学びます。これは、人間の子どもが周囲の会話や音声を繰り返し聞くことで言語を覚えていくのと似ています。
2. 意味の理解なしに文法やパターンを把握することがある
子どもも初期の段階では、文の意味を深く理解せずに「おはよう」「ありがとう」といった言葉を文脈で覚えます。LLMも、意味を「理解している」わけではなく、統計的に正しい文を予測して出力しています。
○根本的な違い
学習方法については、幼児が感覚(視覚・聴覚)や体験、身体運動と結びつけて言語を学ぶのに対し、LLMはテキストデータのみを学習素材とする。
意味の理解については、幼児が言葉と現実世界の「意味」の関係を体験的に学ぶのに対し、LLMは「意味」は理解せず、単語の共起やパターンから推測する。
能動性については、幼児が自分から質問したり、フィードバックを受けて修正するのに対し、LLMは能動性はなく、事前に訓練されたモデルとして反応するのみ。
まとめ
LLMは人間の幼児が言語を学ぶ「表面的な方法」に似た面がありますが、本質的には「意味」や「経験」に基づいていないため、構造的には全く異なる学習プロセスを辿っています。
そのため、LLMは「言語を使っているように見えるが、実際には世界を理解しているわけではない」という点が重要です。
【こちらからの質問③】
幼児が感覚、体験、身体運動と結びつけて言語を学ぶのと同じように、LLMでも「光、音波などの感覚の源」、「体験を構成する諸要素を人間に感覚させる源」、「身体運動における諸感覚の源」を言語と同時に学ぶように設計すれば、幼児とLLMの言語取得に違いはなくなるのではありませんか?
【ChatGPTの答】
ご質問の要点:
「LLMに光や音、体験や身体感覚などを同時に学ばせるようにすれば、人間の幼児のように言語を“意味”と結びつけて習得できるのではないか?」
○結論:その方向性は可能性があり、現在のAI研究でも実際に取り組まれていますが、完全に幼児と同じにはなりません。
○詳細な考察:
1. マルチモーダルAIの台頭:LLM+視覚・聴覚など
現在、GPT-4(Vision対応)やGoogleのGemini、MetaのImageBindなどは、すでにテ
キストだけでなく画像や音声、時に動画などのマルチモーダル情報を処理・学習するようになっています。これはまさに、あなたがおっしゃった「感覚と同時に言語を学ぶ」試みです。
たとえば:
· 「りんご」という単語と**その画像(視覚)**を同時に学ぶ
· 「ワンワン」という言葉と**犬の鳴き声(聴覚)**を結びつける
· ロボットに動作(身体運動)させ、その体験と言語をリンクさせる(Embodied
AI)
こうした取り組みにより、「言葉と現実世界との対応関係」をモデルが学べる可能性が出てきました。
2. Embodied AI(身体を持つAI)による体験の学習
ロボットなどにLLMを組み込み、現実世界での動き・触覚・空間感覚と「言葉」を一緒に学習させる試みもあります。これは、まさに幼児が「手を伸ばす」「転ぶ」「つかむ」などの経験を通して「意味」を形成することに近いです。
例:
· OpenAIの「Humanoid + LLM」の実験
· Boston Dynamicsロボットと自然言語の統合制御
· StanfordのBEHAVIORやRT-2など
3. 限界:意味の「存在」ではなく「構成」
ただし、AIが意味を「体験的に構成する」と言えるかどうかは大きな論点です。幼児は
自己意識や感情、動機づけを持って「この世界の中の自分」を形成しますが、現在のAIにはそれがありません。
· AIは光や音を「ピクセルや波形のパターン」として数値処理しますが、「赤い夕日がきれいだ」と感じることはできません。
· 「痛い」「怖い」「気持ちいい」などの身体的・情動的感覚をAIは持ちません。
したがって、「センサーデータを言語と一緒に学ぶことはできる」が、「意味を“感じて”獲得している」とまでは言えないのです。
○結論まとめ:
感覚の統合という観点では、幼児が五感と運動で体験するのに対し、未来のLLM(マルチモーダル・身体AI)ではセンサーとデータで対応づけます。
意味の形成という観点では、幼児が自己の存在・情動体験に基づくのに対し、未来のLLM(マルチモーダル・身体AI)ではパターン認識と対応の記憶です。
学習の動機という観点では、幼児が好奇心、欲求、感情によるのに対し、未来のLLM(マルチモーダル・身体AI)では目的関数に基づく訓練によります。
意味の理解という観点では、幼児が「わかる」「感じる」のに対し、未来のLLM(マルチモーダル・身体AI)では「予測する」「対応づける」です。
結局のところ、感覚や体験を模倣させることで、LLMをより人間に近づけることはできますが、「人間になる」こととは本質的に異なります。しかし、非常に重要で未来的な方向性であり、研究は確実に進んでいます。
より深く知りたい方には、以下のキーワードをおすすめします:
· マルチモーダルAI
· Embodied AI
· 感覚運動ループ
· 意味のグラウンディング問題(symbol grounding problem)
【次回、人間はAIとは違うとするチャットGPTに対して更なる抵抗を試みます。】