2025年6月23日

 

 トランプ政権からの要求はGNP比3.5%らしい。(6月22日(日)朝日朝刊)

 現状は2%弱だから、大雑把に言って防衛費倍増の要求ということになる。

 この要求に応じなければ、トランプ政権のことだから、当然に何らかのペナルティを科してくる。

 ストレートに拡大抑止力の削減という軍事的なペナルティか、貿易措置等の経済的なペナルティか、そのいずれもか、予測しがたい。

 いずれにしても外交安全保障の根幹にかかわる問題であり、我が国にとって単なる関税引上げ以上の大問題である。

 日本の将来を決める、しかも選択肢の幅の極めて大きい、最重要問題である。

 

 本来であれば、タイミングからしても7月の参院選の争点としてこの問題に対する国民の態度が問われなければならない。

 現行の防衛力整備計画では5年間(2023~2027)の防衛費は43兆円とされている。

 この防衛力整備計画を期中改定するのかしないのか?するとすれば増額改定か減額改定か?その改定幅は?ということになる。

 そして、具体的には対応すべき軍事衝突の内容とそれに応じて整備すべき防衛力の内容が議論されなければならない。(この議論なくして防衛費の多寡の議論はそもそも成立しない。)

 また、増額改定とするならばその財源も議論の俎上に上がってくる。

 

 しかしながら、政党、マスコミ、軍事外交専門家等の責任放棄だと思うが、国民にはこの問題に関する選択肢はまったく提示されていない。

 政府の対応について根拠なき推測を述べれば、防衛力の水準、内容は我が国が独自に決定するというタテマエを表面的には掲げ、(アメリカからの増額要求を歓迎する勢力を抱えながらも)アメリカからの要求を値切りつつ、なし崩し的に、すなわち国民的議論となることを出来るだけ回避しつつ、防衛費の増額を図るであろう。

 「アメリカからの要求を値切る」とは言っても、アメリカとの対立抗争に至る選択はなく、増額はこれまでよりも一層アメリカとの軍事同盟体制に日本が組み込まれることを意味するものとなるであろう。

 軍事介入をするかしないか、その判断の基準が「我慢ができるかできないか」というものでしかない恣意的なトランプ・アメリカとの関係強化については、素朴な疑問が国民の間で生じつつある。

 それにもかかわらず、対米政策に腹が固まらない野党は、政府の対応に対するアンチ・テーゼを提示できないのであろうか?

 提示できないがゆえにこの問題の参院選における争点化を避けているのであろうか?

 視聴者のためにニュースをわかりやすく解説するというマスコミのサービスは、表面的な看板にとどまり、権力への忖度によって悲しい制約下に置かれているのだろうか?

 軍事外交専門家たちは、そういうマスコミに表現手段をうばわれ、お手上げ状態なのであろうか?

 若い世代にとって、この問題は年金問題よりも喫緊、深刻なのではなかろうか?

 現実的な目の前の課題に対応しない「平和主義」「平和運動」とは、夏のお盆の行事のようなものにすぎないのだろうか?

 

 とにかく、国民を巻き込むことこの上ないこの問題について、国民に政策の選択肢が提示されなければならない。

 そして、国民の選択なくして国民が極端な悲劇に陥るという事態(先の大戦がそれだ。)は絶対に避けなければならない。

 

(現在の状況で国民に政策の選択肢を提示する「バンカー・バスター」になりうるいちばん現実的な存在はたぶんマスコミだろう。矮小な問題群にからめとられることなく、真の視聴者サービスに徹してもらいたい。)