2025年4月21日
関税の効果も為替の効果もそっくり商品の価格に反映すると仮定すると、関税の効果と為替の効果は相互に換算することができる。
この換算によって現在の事態はより実感しやすくなると思われる。
1ドル=145円が1ドル=120円と円高ドル安になったとしよう。
現状からして十分にありうる変動である。
アメリカでの輸入価格が290万円の日本車は、関税0とし、諸経費を無視すれば、1ドル=145円でアメリカでは2万ドルとなる。
1ドル=120円の円高ドル安によって、それが約2万4200ドルと高くなる。
2万ドルから2万4200ドルへの値上がり、すなわち円高比率と同じ20.8%の関税が課されたのと同じ効果をこのドル安円高がもたらしたということになる。
逆に、今回の自動車アルミ関税25%、日本への「相互関税」24%を約25%として、同じ効果をもたらす為替相場に換算すると1ドル=145円が1ドル=116円になるのと同じとなる。
黒田バズーカの時代はその終盤期を除き、ほとんどはこれよりも円高の時代であった。
そういう意味では1ドル=116円はそう驚く水準ではない。
その水準をふっかけて、それがこわいなら言うことを聞けとアメリカが言っていると解釈することもできるわけだ。
数値の評価はさておき、その恐喝的態度の無礼さ、無頓着さ、粗雑さに驚かされる。
また、1985年のプラザ合意後約1年で、1ドル=240円が1ドル=120円となった事態は、関税に換算すれば100%の関税が課されたのと同じ事態であったということになる。
当時、日本は現在の中国並みに扱われたのだ。そして「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の地位から蹴落とされたのだ。
なお、もちろん、今回の問題は日米二国間の問題であるにとどまらない。
今回の問題の本質中の本質の問題は2つある。
その1は、アメリカが露骨な中国敵視策に踏み切り、共存共栄の道を事実上放擲したらしいことである。
その2は、WTOルールが完全に無視され、世界貿易がノンルール化し、不確実な状態に置かれたことである。
これらの本質が変わらないのであれば、仮に日米間が温和な交渉結果に終わろうとも、世界同時不況は必至で、米中の覇権争いも一層先鋭化することとなる。
その悪影響は世界全体に及び、長期化し、地球が凍える。日本だけが例外などと言うことはあり得ない。
皮肉なことに、パリ協定を離脱したアメリカは世界全体の二酸化炭素排出量の削減に大いに貢献することになるかもしれない。
それを考えれば、二国間だけを考えた関税率なり為替相場での日本経済への影響予測などということは事態の重大性を看過させるものであり、有害な予測でしかない。
トランプを選んでしまったアメリカ国民が選択の誤りに早く気づくことを祈るしかない。我々はそういう状態に置かれてしまった。