2024年10月30日

 

 自民党の裏金問題に端を発した政治資金規正制度の改正アイデアの中に政治資金の使用状況をチェックするための第三者機関の設置という案がある。

 世間一般から好意的に受けとめられているようである。

 しかしながら、理念的にも、「コスパ」的にも、その案には大いに疑問がある。

 設置される組織は、繁文縟礼的、重箱の隅的、取締り的、官僚的なものになるにちがいない。

(ある飲食への支出が政治資金の使途として認められうるかどうか、その判定基準の成文ルール化とその運用を考えてみれば、想像がつくであろう。)

 そして、政治資金に関する世間の関心が薄れてきたとき、その組織はルーチン作業をするだけの、だらけた、活力のない組織として腐朽するであろう。

 

 そもそも、政治家が「まとも」であり、普通の道徳意識を持っているならば、そのようなチェック機関は不要のはずである。 

 そして、「まとも」ではない政治家が少なからずいると思われる悲しむべき現状において、政治資金に関して潔白であることを国民の前に明らかにすることは政治家の責任であり、政党の責任である。その方法、手段は政治家たち自らが、自らの負担において準備すべきことである。

 国民は政治家たちの潔白証明を待つ立場にあり、国民がコストを負担して政治家たちにお願いするような性格の事柄では決してない。

 理念的にも、「コスパ」的にも、国民の納得できる合理的方法を、政治家が国民に示して「われわれの潔白を信じてください」と頭を下げるべき事柄である。

 かたちだけの組織を作り、血税を注ぎ込んで、政治改革のアリバイとするような安易な道は決して許されない。

 

 政治資金チェックのための第三者機関は、第三者性のある民間人をメンバーとする委員会と、その下に置かれて調査にあたる常設事務局というような形になるであろう。

 規模は違っても組織形態としては、会計検査院、人事院、県レベルでは教育委員会といった組織に類似のものになるであろう。

 すなわち、一般の官庁とは異なるとはいえ、結局、官僚組織である。

 内部の諸ルールは極めて複雑な内容となり、その制定のために優秀な頭脳の動員が必要となるであろう。

 組織の維持、運営のために、軽く見積もっても億の単位の経費を要するであろう。

 

 そんなことをしなくても、まずは自民党によって現行制度に仕組まれた「穴」を繕うだけで相当な効果が期待できるはずだ。

 そしてさらに、例えば政治資金の収支発生時のインターネット上での同時的公表、政治家たちの、あるいは政党間の相互チェックシステム、マスコミ、あるいは市民オンブズマンへの広範な調査・取材の権利付与等々、コストをかけずに効果を期待できる方法はいろいろと考えられるはずだ。

 問題が発生したら対応担当組織の設置というのは、知恵なき人たちのアリバイ作りのためにしばしば採用される、国民を欺く政策手段であり、政治資金に関する第三者機関の設置とは、それと同根の愚策でしかない。

 もっと真剣に考え直して来い、他人のふんどし(税金と役人)で相撲を取るなと国民は政治家たちに要求すべきだ。