2024年9月13日
自民党総裁選立候補者9人が揃った。
それぞれ政策に独自性を出そうと努力しているようだが、ほとんど言葉の遊びが展開されているだけとしか思えない。
ウエイトの置き方に微妙な違いがあるだけで、財政無視のバラマキ政策で共通している。
筆者としては彼らの思いつき的な、大衆迎合的な政策に大きな関心を持つことはできない。
筆者が関心を持つのは、唯一、国民を極端な悲劇のドン底に突き落とす可能性がある安全保障政策、とりわけ憲法9条改正への態度である。
彼らはそろって憲法改正の推進を掲げており、「自衛隊明記」が最低共通ラインとなっている。
この最低共通ラインを超えてどこまでの憲法9条改正を考えているかについては、彼らの間に大きな違いがあると見られる。
考えられる彼らの憲法9条改正内容を分類すれば次の4つのうちのいずれかであろう。
(0) 表面的には憲法9条改正の姿勢を示しつつ、他の改憲項目でお茶をにごすか、そもそも憲法改正をしないというかたちで9条に手を付けない。
(1) 「自衛隊明記」のみの改正をめざし、その場合に規定することが必須となる自衛隊設置の目的については、現行憲法によって許容されている「個別的自衛権+「存立危機事態」に限定された集団的自衛権」の範囲にとどめる。(注:「「存立危機事態」に限定された集団的自衛権」の内容は、現実的には考えられない、言語上の仮想構築概念で、運用困難な、インチキなものである。したがって、事実上は自衛隊の設置目的は「個別的自衛権」の行使のみとなる。)
(2) 「自衛権明記」を掲げつつ、その場合に規定することが必須となる自衛隊設置の目的を「自衛権の行使」とし、「自衛権」が「集団的自衛権(注:同盟国の戦争に日本も参加することになる。)」をも含むことを国民に明らかにしないまま、「集団的自衛権」の行使(=自衛隊の海外での武力行使)を可能とする。
(3) (2)による国民に対する詐欺的行為をいさぎよしとせず、正面から自衛隊(あるいは改称して「国防軍」)を「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の行使を目的とする組織であることを国民に明らかにし、憲法、法律にその旨を反映させる。
(注:(2)と(3)の場合には、その後の道筋として、日米安全保障条約の相互防衛条約への改定、自衛隊の海外でのアメリカの戦争への参加(かつてのベトナム戦争への韓国軍、豪州軍、NZ軍の参加のような)、場合によっては徴兵制の採用が考えられる。)
総裁選候補者9人の中に、果たして(0)(1)はいるのだろうか?
石破が(3)であるのは明らかとして、高市、小林は(2)でしらばっくれているのだろうか?国民欺瞞の、犯罪的な(2)で政治的に耐えうると考えているのであろうか?いずれ(3)を明言するのだろうか?
「自衛隊明記」以上に言及しない連中は、自衛隊設置目的についての改正条文レベルでの合意困難を見込んでいて、本気で9条改正には踏み込まないのであろうか?
改正内容については大きく出て強気を見せながら、実はそれによる困難性を認識していて、改正非実現でよしと考えている「タヌキ」がいるのだろうか?
国のあり方の基本中の基本である安全保障政策についての総裁選立候補者の考え方が国民に理解されがたいというのはまったく遺憾な事態と言わなければならない。
長く設定されたという選挙運動期間中、イメージ戦略や言葉遊びに左右されることなく、候補者たちの真の考え方が浮かび上がることを是非期待したい。
(なお、立憲の代表選において本件問題がまったく語られないということの異常性を指摘しておきたい。)
(また、自衛隊のあり方を考える上で、示唆する内容が満載の韓国映画「ソウルの春」(1979年朴正熙大統領暗殺直後の全斗煥による軍事クーデタを描いた作品。韓国で観客動員数昨年第1位。)を最後に推薦しておきたい。)