2024年8月7日

 

 岸田首相が憲法改正の優先すべき事項として、これまでの「緊急事態」に加えて「自衛隊明記」を言い出した。

 自衛隊の諸君としてはこれを歓迎しているであろう。

 自衛隊は現行憲法のもとでも合憲であるというのが正式な政府見解である。(昭和47年政府見解、いわゆる「吉国見解」)

 筆者はそれで十分と考えているが、この政府見解を憲法化したいというのであれば、それに限られるのであれば、それは差支えないと筆者は考えている。

 

 しかし、「自衛隊明記」を主張する人たちが諸君に説明していないことがある。

 「自衛隊明記」の主張は、その真に目的とするところは「自衛隊明記」によって自衛隊の合憲を明確にするところにあるのではない。

 昭和47年政府見解では違憲として否定されているところの「集団的自衛権」をこの際合憲化しようというのが「自衛隊明記」の隠れた、真の目的である。

 「集団的自衛権」の合憲化が意味するところは、自衛隊の海外派兵、海外での武力の行使、海外での戦闘行動の合法化である。

 「専守防衛」という原則の全面的廃棄であり、日米同盟のNATO化である。

 諸君の軍事作戦行動する範囲は、全地球的規模となるのである。

 現在米軍が展開している世界各地に諸君も赴くことになると考えてよい。

 

 具体的には、「自衛権」という言葉に「集団的自衛権」が含まれているということを十分に説明することなく、「自衛権」という言葉が憲法上明記され、「集団的自衛権」が全面的に合憲化される。(現在「集団的自衛権」は「存立危機事態」において例外的に認められるということになっている。)

 そして合憲化された「集団的自衛権」を行使する自衛隊が新たに生み出されることになるのである。

 現状の自衛隊の合憲が明らかにされるにとどまらず、憲法改正により自衛隊は完全に変質するのである。

 世界の警察官としての役割を自認してきたアメリカは、トランプが露骨に主張しているように、その負担を同盟国により多く分担させたいと強く考えるようになっている。

 自衛隊の変質はまさにアメリカの思うつぼであろう。

 

 「自衛隊明記」についての自衛隊内部での説明を受けるにあたり、「集団的自衛権」についての説明がなされるのか、「専守防衛原則」の変更が説明されるのかに十分注意を払ってもらいたい。

 その説明が十分にされないとすれば、「自衛隊明記」をエサにして諸君を欺こうということが企まれている。

 当事者として血を流すのは諸君である。当事者として諸国の軍民に銃弾をあびせるのは諸君である。

 その諸君に本当の説明をしないで同意を得ようとするなどということは、民主主義の世の中で許されることではない。

 諸君!警戒怠りなく「自衛隊明記」の動きに対処されたい。