2024年6月16日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第561回です。

 ウクライナ詠パレスティナ詠が歌壇に2首、俳壇に2句ありました。後ろに掲げます。

 

 

【俳句】

 

 

母と見る・虹よ余命の・宣告後 (高松市 島田章平)(大串章選)

 

 

(「母とともに」ではなく「虹が母に見える」と解釈してみた。余命宣告を受ければ見えるものが違ってくるだろう。)

 

 

絵空事・めきてカクテル・さくらんぼ (神戸市 小柴智子)(小林貴子選)

   

 

(かつてそんな飲み物があった。今それを飲むとすれば、自分をドラマ化している時。)

 

 

蚊取線香・時計代わりの・昼寝かな (徳島市 滝田有五)

 

 

(けむりの如き時間、時間の如きけむり。)

   

 

炎天下・猫はトカゲを・捕えたり (須崎市 泉田三津子)

 

 

(双方、ダラダラしてはいられない。生存競争真っ只中。)

    

 

爆撃は・遠隔操作・蠅たたき (横浜市 佐藤満)(大串章選)

 

 

(パレスティナ、ウクライナ詠)

 

 

戦地めく・蟻のむくろを・蟻運ぶ 

          (東京都世田谷区 石川昇)(大串章選)(高山れおな選)

 

 

(パレスティナ、ウクライナ詠)

 

 

【短歌】

 

 

老女ひとり・銀座ライオン・午後三時・姿勢正しく・黒ビール飲む 

                   (三郷市 村山邦安)(永田和宏選)

 

 

(お姿のみでなく、精神的にも洗練されていなければならない。)

 

 

水まきを・すれば葉かげに・隠れいし・家守出で来て・水を舐めおり 

                 (観音寺市 篠原俊則)(馬場あき子選)

 

 

(みんなが知らない自然観察結果の報告、これ短歌の一大ジャンル。)

 

 

成ったのか・成っていぬのか・世間とは・交らぬ四十路・甘えの我が子 

                      (東京都港区 永田三奈)

 

 

(育てた責任の思いもあり、平らかならぬ日々を過ごす老親たち、数多(あまた)。)

 

 

子育ては・世間相場の・強制で・愛なき母性の・われは申し子 

                        (いわき市 長田一枝)

   

 

(親への恨みはさて措いて、前へ進まねばいけないだろう。この一首はそのきっかけとしてほしい。)

 

 

「死鬼不夢(シオニズム)」と・書いて抑える・腹の虫・いつまで続く・残虐非道 

                 (五所川原市 戸沢大二郎)(高野公彦選)

 

 

(パレスティナ詠。)

 

 

一望の・瓦礫のほかは・見えねども・一万人が・埋もれているガザ 

                  (八王子市 額田浩文)(馬場あき子選)

 

 

(パレスティナ詠。)