2024年6月9日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第560回です。

 ウクライナ詠・パレスティナ詠が歌壇に5首、俳壇にはありませんでした。後ろに掲げます。

 

 

【俳句】

 

 

晩年や・何を今更・更衣(ころもがえ)

         (苫小牧市 齊藤まさし)(長谷川櫂選)(小林貴子選)

 

 

(こういう不貞腐れ、喧嘩腰が老人の精神的健康に必要なのだ。)

 

 

蟻の列・赤旗振れば・凄かろう (吹田市 太田昭)(大串章選)

   

 

(赤旗がノスタルジーを呼ぶ世の中になっている。)

 

 

山ひとつ・浮島となる・植田かな (茨城県阿見町 鬼形のふゆき)(大串章選)

 

 

(山は筑波山と見た。)

 

 

ガンマンの・ごと立つ農夫・麦の秋 (伊万里市 萩原豊彦)(高山れおな選)

 

 

(麦の秋は一風変わった想像を呼ぶ。)

 

 

じやれ合うて・触れず紋白・蝶ふたつ 

              (和歌山県上富田町 森京子)(高山れおな選)

 

 

(「じやれ合う」こと自体が目的なのであろう。けっこうなことだ。)

 

 

休耕と・思いし田にも・トラクター (佐賀市 森田一夫)

 

 

(けっこう、みんな、どうするのか見ている。)

 

 

杖ついて・老爺リハビリ・麦の秋 (高松市 田毎文二)

 

 

(ヒバリも応援している。)

 

 

ジョギングを・しつつ狂歌を・ひねる朝 (浜松市 笠田剛四郎)

 

 

(狂歌の種の尽きぬこの頃。)

 

 

【短歌】

 

 

田に水の・満ちゐし夕べ・芹の香と・蛙の声を・あてに吞む酒 

                (北海道 高井勝巳)(馬場あき子選)

 

 

(いかにも酒がうまそうだ。)

 

 

一族の・塋域(えいいき)広し・然れども・斬刑受けし・国士墓なし

                        (岡山市 岡田敬一)

 

 

(森鴎外史伝小説に取り上げられた横井小楠暗殺者「津下(つげ)四郎左衛門」は岡山の人。その人のことだ。)

 

 

施設なる・遠い恩師に・報告す・我また恙(つつが)・なく致仕(ちし)せしと

                         (高松市 石田五郎)

 

 

(作者はめでたしと詠ってはいないようだ。)

 

 

二千人・逮捕されても・反戦の・声高らかに・米の学生 

                    (取手市 緑川智)(馬場あき子選)

 

 

(パレスティナ詠。)

 

 

ガザの子の・白黒写真と・目が合いぬ・葱包まれし・新聞畳む 

                  (佐伯市 川西敦子)(高野公彦選)

 

 

(パレスティナ詠。) 

 

 

地獄での・悪魔の叫びに・聞こえたり・ロシア兵士の・万歳(ウラー)の雄たけび 

               (五所川原市 戸沢大二郎)(高野公彦選)

 

 

(ウクライナ詠。)

 

 

「爆撃で・死ぬなら家族・一緒がいい」・ガザの家族は・一緒に寝たり 

                 (八王子市 額田浩文)(永田和宏選)

 

 

(パレスティナ詠)

 

 

運ばれた・母より胎児・取り出され・生まれながらに・孤児となりし子 

                  (川崎市 宇藤順子)(永田和宏選)

 

 

(パレスティナ詠)