2024年5月26日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第558回です。

 ウクライナ詠、パレスティナ詠が歌壇に1首、俳壇にはありませんでした。後ろに掲げます。

 

 

【俳句】

 

 

後の世は・蝮にならん・彼奴(きゃつ)を咬まん 

               (川越市 益子さとし)(高山れおな選)

 

 

(強烈な怨恨を俳句が軽くしているかも。)

 

 

春の雨・女傘にて・夫(つま)帰る (柏市 藤嶋務)(小林貴子選)

   

 

(作者が男性らしいところが不可解。自分のことを詠んでいるとしたら、複雑。)

 

 

春愁を・抜けし一日・マティス展 (松戸市 橘玲子)(長谷川櫂選)

 

 

(マティス感に共感。)

 

 

春潮や・地引網にも・深海魚 (西東京市 高橋秀昭)(長谷川櫂選)

 

 

(春は狂気をはらむ。)

 

 

桑芽吹き・蚕(こ)飼いに暮れし・母をふと (前橋市 荻原葉月)(大串章選)

 

 

(芽吹きは過酷な労働の要請の合図でもあった。)

 

 

【短歌】

 

 

原爆の・惨状描写・なきことが・何より怖い・「オッペンハイマー」

            (東京都 八巻陽子)(高野公彦選)(永田和宏選)

 

 

(映画の観方を誤っているのではないか。反核映画なのではない。)

 

 

バイトせし・茗渓書店・すでに無く・書肆(しょし)あまた消ゆ・お茶の水より 

                (さいたま市 伊達裕子)(高野公彦選)

 

 

(「茗渓書店」の「茗」とはお茶のこと。すなわち「茗渓」とはお茶の水のこと。たしか江戸文人の命名。)

 

 

屈強の・中に女の・声高く・近海ものの・金目鯛を競る 

                  (三浦市 秦孝浩)(馬場あき子選)

 

 

(作者がセリ人のうちの一人と読むといっそう味わい深い。) 

 

 

岩山に・老猫一匹・日向ぼこ・もはや下界に・降りはせぬらし 

                        (西予市 薮田茂七)

 

 

(仙人ならぬ仙猫か?)

 

 

「虚栄心」・そのむなしさを・忘れいて・七十五年・今発たむとす 

                       (東京都 永田朋二)

 

 

(忘れさせたのは何だったのだろう。)

 

 

草原に・埋もれて脚を・狙い撃つ・狡猾極まる・「花びら地雷」 

                  (札幌市 田巻成男)(高野公彦選)

 

 

(ウクライナ詠。)