2024年3月19日
昨日の衆院政倫審での下村博文の審査を終えて、政倫審では事態解明はできなかった、偽証が罪に問われる証人喚問しかない、というような雰囲気が醸成されている。
しかし、同じようなメンバーを証人喚問しても新たな証言を得ることは期待薄であろう。また、キーパーソンとして浮上している森喜朗の招致には政府自民党は容易には応じないであろう。
事態解明は断念せざるを得ず、事件はうやむやになってしまうのであろうか。
筆者の状況判断を報告しよう。
「ことは詰んだ」と考える。将棋でいう「詰んだ」である。
詰んだことに対して岸田首相がどのように対応するかは予測しがたいが、「ことは詰んだ」のである。
2022年5月の安倍派政治資金パーティーについて、同年4月にキックバックはしないという方針が安倍元首相の判断によって決定し、そのことは安倍派幹部によって各議員に伝達されたという事実がある。
そして、同年8月5日の安倍派幹部(塩谷、下村、西村、世耕、事務局長松村)の会合において、「合法的な」代替方法の提案があったにもかかわらず、その後、4月の決定を覆して、従前の方法でキックバックを復活することが各議員に伝達されたという事実がある。
従前のキックバックの継続という各議員への伝達の事実があるにもかかわらず、伝達の前提となる決定をだれがしたかが謎となっている。
政倫審では明らかにならなかった。そして検察の立件にあたってもこのことは解明されなかったと考えられる(解明されていれば、決定者の起訴は免れなかったはずだ)。
しかし、各議員が伝達された事実があるのであり、だれからの伝達であったのかを遡っていけば決定者にたどり着かないはずはない。
方法はいろいろ考えられようが、事態を解明する意図があるならば、当然のこととして、ここが追及されなければならない。
岸田首相は、今国会中に関係者の処分を行うことを表明し、処分前に解散はないことも表明している。
安倍派幹部の処分の程度を決めるには、この決定への関与が最重要の要素であり、そのことの解明なくして処分は不可能である。
もし安倍派幹部であったという外形だけで一律に処分するとすれば、違法行為の決定者と非参画者を同列に取り扱うこととなってナンセンスである。
また、安倍派幹部を一律に扱うということは、違法行為の決定者として処分するのではないということであり、処分が軽いことを意味し、国民の納得を得ることは困難であろう。
決定者確定のために伝達ルートを遡っていく過程において証言を拒否する者が出てくれば、その者を事態解明に対する非協力者として自民党は処分の対象にすることもできるはずである。
岸田首相は事態解明を逃れられない立場におかれているのである。
そして、キックバック復活の決定者は、代替案の存在を知りながら従前どおりの復活を決定しているのであり、その決定は政治資金収支報告書不記載という違法行為の認識のもとでの決定だということが明確とならざるをえない。
決定非参画者であれば、不記載知らず、違法行為の認識なしと白(しら)をきることが可能だが、決定者にはその対応は不可能なのである。
そもそも収支報告書不記載のキックバックをだれが始めたのかは、関係者が口をつぐんでしまえば、森喜朗の証人喚問以外に方法はないであろう。ここではことが詰んでいない可能性はある。
しかし、2022年政治資金パーティーについての安倍派意志決定過程の追及は、以上のとおりであって、国民が目くらましを食らわせられるのでないかぎり、あるいは自民党がことを隠すために自爆する判断をするようなことがないかぎり、「ことは詰んだ」のである。