2024年3月2日
衆院政倫審における安倍派幹部4人の弁明及びそれに対する各党からの質疑により、彼らの防衛線がどこにあるかが明らかになった。
そして、その防衛線は、元NHKで安倍番の記者であった岩田明子氏の証言によって破ることができる。
安倍派によるパーティー券収入のキックバックは、政治資金収支報告書に不記載とすることとセットのものであり、そのセットにより、使途を明らかにする必要のないお金を議員が持つことができるというところにその妙味があったものである。
この政治資金収支報告書への不記載は政治資金規正法違反であり、その認識のもとで、キックバックを仕組んだのであれば、情状酌量の余地のない、立派な犯罪であり、仕組んだ議員は犯罪者だということになる。
そうなれば、党除名はもちろんのこと、議員資格を失うことも必至ということになる。
このため、安倍派幹部は、それ自体は犯罪とはいえないキックバックは事実として認めるものの、収支報告書不記載がそれとセットであるという認識はなかったとするところに防衛線を設けているのである。
この防衛線を危うくするのは、安倍元首相が安倍派会長就任後の2022年4月に行ったキックバック停止の決定である。
言うまでもなく、安倍元首相の問題意識は、キックバックが報告書不記載という政治資金規正法違反とセットの犯罪であったというところにあった。
犯罪の放置が重大な政治的事件となるという危機意識があったればこそ、安倍元首相は長年の慣行を廃止する決定を行なったのである。
そうでなければキックバックを停止しなければならないような事情は存在しない。
この安倍元首相の停止決定を知った安倍派幹部が安倍元首相の問題意識を知らないはずは、安倍派幹部痴呆仮説に立たないかぎり、絶対にない。重大さを知ったからこそ、安倍元首相の決定に従ったのである。
したがって、2022年8月中旬以降に行われたと推定される安倍元首相の停止決定を覆すキックバック再開決定にあたり、この問題意識がなかったはずは、これまた安倍派幹部痴呆仮説に立たないかぎり、ないのである。
したがって、2022年5月に開催された安倍派の政治資金パーティーのキックバックの報告書不記載は、会計責任者のみの責任とすることはできず、安倍派幹部の共謀があったのである。
(塩谷議員はそもそもキックバック再開の明確な意志決定がなく、流れで決まってしまったかのようなナンセンスな説明をしている。共謀に参加した安倍派幹部に少なくとも塩谷、下村、世耕の3人は入ると考えられる。この点を追及せずに不起訴としたことについては、東京地検特捜部が安倍派幹部を痴呆と判定していたのでないかぎり、手抜かりと言わざるをえない。)
安倍派幹部は、このことを隠蔽するため、安倍元首相の問題意識がいかなるものであったかについて、不自然で、意味不明の「現金で配るのは不透明」などという問題意識をでっち上げて説明している。
不自然さ、意味不明を追及されたら、それ以上はわからないなどと白(しら)をきるつもりなのかもしれないが、ここで第3者的立場で安倍元首相の問題意識を知っていると思われるのが、元NHK記者の岩田明子氏である。
問題が発覚した直後、安倍元首相のキックバック停止決定を最初に明らかにしたのは彼女であった。優秀な記者である彼女が安倍元首相の問題意識を知らないはずがない、その記録を残している可能性も高い。
彼女のその証言で安倍派幹部の防衛線はあっけなく破れるのである。
彼女の証言で安倍派幹部数人の政治生命は断たれることになる。彼女の責任は極めて重大であり、その影響は大きい。彼女の勇気ある証言を期待したい。
(なお、20数年前にさかのぼると言われる報告書不記載とセットのキックバックの開始については、安倍派幹部の知らぬ・存ぜぬ・関与せずという態度が続く以上、森喜朗元首相の国会招致しか手がないと思われるが、その場合でも報告書不記載までは考えていなかったと頑張られた場合の攻め手を見出すのはなかなかむずかしいと感じている。野党議員の鋭い追及に期待したい。)