2023年12月19日

 

 イスラエル軍は、人質救出がその作戦行動の主要目的のひとつであるにもかかわらず、ハマスの拘束から離脱していたと思われる人質3人を誤射殺した。

 人質たちは自爆テロリストと誤認されないように、白旗を掲げ、上半身を裸にするという注意深い対応をしていたにもかかわらずにである。

 イスラエル軍は兵士のミスであったとしている。

 意図せざることをしてしまったという意味では、たしかにミスであろう。

 しかし、兵士の対応として、この行動がミスであったと言えるだろうか?

 兵士としては、訓練どおりの自然な行動をとっただけのことと言えるのではないだろうか?

 続報がないので知らないが、おそらく兵士はこの行動によって罰せられることはないのではなかろうか?

 

 市街地における白兵戦では、動いているものを察知したならば、即発砲するというのが常識だろう。

 その即の反応を逸すれば、自分が敵によって殺されることになるからだ。

 女だろうと子供だろうと、イヌだろうとネコだろうとネズミだろうと、そんなことにはかまわず、動くものがあったら即発砲する、それが訓練で教えられたことだったはずだ。

 

 そして、兵士は、数メートルの距離にいる敵と、殺すか殺されるかの状態にあれば、完全に狂奔しており、一匹の野獣と化していると言えるだろう。

 冷静な判断を期待すべくもないのである。

 大事なのは、動くものに反応してオートマチックに撃つこと、それだけであり、兵士にとってはそれがすべてである。

 人間を戦闘マシーンとすること、ヒューマニティを停止できるようにすること、歩兵を訓練するというのはそういうことだ。

 (「武士道とは死ぬこととみつけたり」とは、未来形で死ぬのではない。武士となったとき、すでに死んでいなければならない、すでに人間ではなくなっていなければならない、ということだ。)

 

 「白旗を掲げ、上半身を裸にしている者を撃つな」などという注意が発せられることなどないだろう。

 イスラエル軍は決してそんなに甘い存在ではない。

 その注意を知ったらば、ハマスは、白旗を掲げ、上半身を裸にし、下半身に爆弾をセットした、自爆テロリストを配置するにちがいない。

 甘い判断は味方の兵士を殺すことになるのだ。

 敵が一手を打ってきたら、対応の一手を打ち返す、この連鎖が戦場の法則だ。そこが戦場であるかぎり、その連鎖は無限に続くのだ。

 人間の知恵の莫大な浪費がここにある。(抑止力論による軍拡競争において、また同じ。)