2023年11月8日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第531回です。
今回、ウクライナ、パレスティナを扱ったものは、俳壇に2句、歌壇にはありませんでした。
2句はうしろに掲げます。
【俳句】
役目終へて・雀の友と・なる案山子 (東広島市 久岡隆)(大串章選)
(人間からの指示がなければ、案山子も対立は好むところではなかったのだ。)
捨(すて)案山子・もう青空も・見飽き(みあき)たり
(奈良市 田村英一)(大串章選)
(邪険にしながら、人は案山子のことを気にしている。「まなざし」をもつものに人は弱いのだ。)
中東の・胸裂く所業・秋憂ふ (さいたま市 大塚四郎)(小林貴子選)
(パレスティナ詠)
戦争が・色なき風を・赤く染め (川崎市 秋月あかり)(大串章選)
(ウクライナ・パレスティナ詠)
【短歌】
木洩れ日と・風のさざめき・鳥のこゑ・もろとも失くす・欅(けやき)を剪(き)りて
(羽咋市 北野みや子)(佐佐木幸綱選)
(けやきの鎮魂を要す。)
獄中で・闘ひ続くる・人もあるに・我は娑婆にて・無為に生きたり
(朝霞市 岩部博道)(高野公彦選)
(過去形は棺桶に入ってからでいい。)
もう誰も・住まぬ実家の・仏壇の・兄の遺影の・白き歯並び
(東京都 村上ちえ子)(高野公彦選)
(日本中にある空家のかなりのもの、あれは墓標と考えるべし。「しるし」が欲しい。)