2023年8月1日
マイナ保険証の取扱いをめぐる関係閣僚会議の開催が急遽中止となったというニュースがたった今あった。
岸田首相記者会見の内容決定のために設定されていた閣僚会議である。
政府内の調整がとれなかったのであろう。
しかし、時間をかけたからといって、絶対に、いい考えが生まれることはない。
なぜなら、政府はそもそもこの問題の認識を根本的に間違っているからである。
「国民の不安を払しょくする」というようなことを政治家たちが言う。
たしかに、ひもづけ手続きの失敗で個人情報の漏洩その他の懸念が生じたことは、そのとおりである。
だから、国民は、聞かれれば、そういうことを言う。
しかし、それは国民の真の心ではない。
「いやな感じ」、この間のいろいろで国民の間に醸成されたのは、政府に対するこの感じである。
それは「個人情報の漏洩」についての不安というようなものではない。
国民にマイナカードを持たせるための政府のやり口の全体に感じる「いやな感じ」である。
「アメとムチ」を駆使して、何がなんでも国民にマイナカードを持たせる、正しいことならばその実現のために国民に「ムチ」をふるうことを辞さない。
こういう国民に対する高慢な政府の態度を、マイナ保険証をめぐって、国民は敏感に感じ取っているのである。
政府というものは、マイナカードではなくても、何か正しいと信じ切ったことについては、どんな手段を使っても、国民をそこに追い込もうとシャカリキになる。
そこにおいて、国民は主権者ではなく、愚昧な大衆であり、政策コントロールの対象でしかない。
国民はその人格を認められず、数値化される「かたまり」としてしか見なされていない。
そのことを国民は知ったのだ。
口先だけの丁寧さは、その裏を感じていれば、むしろ不快を感じさせられるだけのことだ。「いやな感じ」とはそれだ。
中止にはなったが、関係閣僚会議、首相の記者会見は、近々に開催されることになる。
そして、マイナ保険証の全面的実施時期の延長だとか、旧保険証の有効期間だとか、資格証明書の発行ルールだとか、テクニカルな事柄が、丁寧に岸田首相によって説明されるだろう。
しかし、けっして、そんなことでは内閣支持率が上がることはないだろう。
国民に対して「ムチ」をふるう、国民を目的どおりに追い込む、国民を恐喝する、そのことに気づきもしないで、実行してしまう内閣の支持率が上がるはずはないのである。
マイナカード導入の正当性という自信がワナだった。政府はそのワナに落ち込んで、隠れていた反国民的体質を暴露したのである。
少子化対策にしろ、安全保障政策にしろ、そのような体質を有する政府の政策が反国民性を免れることはない。帰納的推論の赴くところである。