2023年7月16日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第516回です。

 今回、ウクライナを扱ったものは、歌壇に1首、俳壇に3句ありました。うしろに掲げます。

 

 

【俳句】

 

 

箸剝(は)げて・貧乏の光・冷奴 (八幡市 小笠原信)(長谷川櫂選)

 

 

(塗りの剝げた箸、たしかに貧乏の象徴。)

 

 

雨脚の・轟く蕗の・傍通る (川越市 佐藤俊春)(長谷川櫂選)

 

 

(蕗が雨音を轟かせているのだ。)

 

 

ハンカチの・木かと問ふ人・袋掛 (羽咋市 北野みや子)(高山れおな選)

 

 

(意図しない滑稽こそ滑稽。)

 

 

にわとりや・うどんのごとく・蚯蚓(みみず)食(は)む 

                  (鎌倉市 黒岩伸幸)(小林貴子選)

 

 

(残酷にも滑稽はある。)

 

 

キュウリ夫人・出来たキュウリに・満足気 (奈良市 梶田三津子)

 

 

(あまりにもふつうの連想だが、それでもおかしい。) 

 

 

どう折っても・戦争の記事・紙兜 (所沢市 藤塚貴樹)(長谷川櫂選)

 

 

(ウクライナ詠)

 

 

死を食らふ・口を開いて・蟻がゆく (東京都 野上卓)(長谷川櫂選)

 

 

(ウクライナ詠)

 

 

六時間の・時差に戦争・夏の月 (横浜市 正谷民夫)(長谷川櫂選)

 

 

(ウクライナ詠)

 

 

【短歌】

 

 

死ぬまでに・ちゃんと読もうと・注文す・マルクス「資本論」・9冊セット

                        (浦和市 亀田十三郎)

 

 

(こういう人は長寿だろう。)

 

 

一雨の・予感の風が・肌に迫り・遠く老爺の・怒鳴り声する 

                         (和歌山市 磯田容二)

 

 

(夕立の前に大気がはらむ狂気。)

 

 

ドニプロと・呼ばれるように・なってから・ドニエプル川・戦火の中に 

                   (東京都 十亀弘史)(永田和宏選)

 

 

(ウクライナ詠)