2023年2月20日

 

 立憲・維新が児童手当支給の所得制限を撤廃する法案を提出したとのニュースが流れた。

 今国会冒頭では茂木自民党幹事長がこの所得制限撤廃に関する従来の自民党の反対方針を見直す旨の発言をして世間で驚かれた。

 報道レベルではこのような動きに対する異論をまったく聞くことがない。

 しかし、筆者は、なぜ児童手当支給の所得制限を撤廃する必要があるのか、素朴にその理由がわからない。

 所要追加経費は1000億円程度でわずかなものだが、それにしてもなぜそれを富裕層に充てる必要があるのだろうか?

 それだけの財源があるのであれば、困窮層に対する手当の充実に使ったほうがよほど意味があるのではないか?

 ここに限界効用逓減の法則が働くのはあまりにも明らかではないか?

 その感覚が各党にないのがまったく不思議でならない。

 

 所得制限撤廃の理由として筆者が知っているのは次の2つである。

1 所得制限撤廃によって、子どもは社会が育てるものであるという思想がより貫徹されることになる。

2 所得制限の存在は、受給者と非受給者との間に分断をもたらす。

 

 理由1について

 子育てに必要な総経費に対してススメの涙でしかない手当の支給で、子どもは社会が育てるという思想の反映というのはいかにもおこがましい。

 子どもは社会が育てるという思想に立つというならば、もっと本格的で徹底的な子育て対策が構築されなければならない。

 社会から放置されている劣悪環境下にある子どもたちを重点的に支援することにも、子どもは社会が育てるという思想の反映は、当然のことながら見られる。

 

 理由2について

 受給者と非受給者の間の分断と言われるような社会現象を聞いたことがない。

 単に受給者と非受給者との間に不連続があるというのであれば、それは同じ事実をより刺激的な単語で表現しただけのことにすぎない。

 

 世論調査で見たところでは所得制限撤廃に賛成が20%台、反対が40%台だった。

 国民も所得制限撤廃には賛成していないのである。

 筆者と同様に、素朴に、不思議で、理解できないのであろう。

 この政治と国民世論のねじれの内実はいったい何なのであろう??