2022年9月15日

 

 宗教の仮面をかぶった犯罪的営利組織による一般大衆からの金品の収奪への対策について、消費者庁において専門家の検討が始まっているようだ。

 宗教については憲法第20条(信教の自由、国の宗教活動の禁止)があるため、それへの規制については慎重を要する。

 しかし、被害の実態からして規制強化はもはやためらうことはできないと考える。

 素人の思い付きながら、以下のような方法はどうであろうか。

 

 現行の宗教法人法第81条(解散命令)では「裁判所は、宗教法人について左の各号に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」とされている。

 そして同条第1項第1号にその事由の中の1つとして「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」が上げられている。

 悪徳宗教法人は世の中に数多あると推測されるが、実際にこの規定が適用されたのはオーム真理教の例があるのみである。

 この規定の適用の困難さは、いわゆる霊感商法、また多額の献金の要求を「法令に違反して」「著しく公共の福祉を害する」と認定するのが簡単ではないというところにある。

 霊感商法による例えば壺や書籍の購入、あるいは多額の献金をまったく問題にしないばかりか、依然として喜んで受け入れている信者の存在があるからである。

 また、一時的にせよ被害者に積極的意思が形成されたという事実があり、それを「マンインド・コントロール」として正常な意思形成でないとすれば、宗教法人すべてを問題とせざるをえなくなるからである。

 そこで現行法にはない仕組みを作って、その仕組みに応じない場合について「法令に違反して」として解散命令にもっていくというアイデアが考えられることになる。

 

 すなわち、「献金、お布施、喜捨等いかなる名目によるかは問わず、宗教法人に対する金品の贈与は、〇年間に限り、それを取り消し、返還を請求することができる。」「返還の請求を受けた宗教法人はただちにその返還の請求に応じなければならない。」という内容の法律を制定するのである。

 報道では契約取消権を定める消費者契約法を適用できないか、献金等は契約といえるか、といった検討が行われているようだが、消費者契約法などにこだわらず新規に立法すればそれでいいと考えられる。(検討が消費者庁主導で行われているため消費者契約法へのこだわりが生まれているとすれば、それこそ縦割り行政の弊害であり、それこそ行政の弊害への批判が強い河野大臣の政治力で突破してもらいたい。)

 このことによって、被害者の救済の道が開かれるとともに、悪質な宗教法人を解散させることができることになる。

 

 問題として宗教法人ではない宗教団体・組織が残存するということがある。

法人ではない団体・組織に対しては、それを法令上特定することができず、結果として献金等返還義務を課すことができず、また解散命令もありえないというところにある。

 しかし、法人であるかどうかということは、当該宗教団体・組織にとっては、税制上の特例を受けられないことをはじめとして、その活動の維持継続に致命的な影響があるものであり、以上の措置は現実的には十分な有効性があると考えられる。