2022年8月28日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第472回です。

 今回、ウクライナを扱ったものは、歌壇で40首中3首、俳壇は40句中1句でした。

 

 

【俳句】

 

 

炎天の・時給九百・二十円 (静岡市 松村史基)(長谷川櫂選)

 

 

(かつての日給の相場だ。)

 

 

死神を・待たせて老婆・桃を吸ふ (川崎市 初見優子)(長谷川櫂選)

 

 

(鬼気迫る、死神のほうでなく。)

 

 

馬をらぬ・馬小屋ありき・終戦日 (金沢市 前九疑)(大串章選)

 

 

(農耕馬が飼われていたこと、軍馬として供出されたこと、若い人は二重にわからないのではないだろうか?)

 

 

拓本の・ごと剥(は)がし立つ・汗の床 (三鷹市 二瀬佐恵子)(小林貴子選)

 

 

(体力消耗も起き上がり困難の因。)

 

 

日本の・卒塔婆・八月十五日 (三郷市 上吹越勇)(小林貴子選)

 

 

(八月十五日はたしかに立っている。)

 

 

【短歌】

 

 

父さんと・同じ大きな・スプーンで・初めてカレーを・食べた夏の日 

               (可児市 前川泰信)(馬場あき子選)

 

 

(我が家には捕虜収容所からかっぱらってきたという父自慢の米軍の大きなスプーンがあった。)

 

 

「終戦は・どちらでしたか」・親父らが・普通に言ってた・昭和の八月 

                (大和郡山市 四方護)(永田和宏選)

 

 

( その答えによってその人の事情が推測可能な、集団的な運命にさらされた時代だった。)

 

 

死にたしと・言うておりしが・癌をえて・つくづく生きたしと・言うて果てしと 

           (オランダ モーレンカンプふゆこ)(永田和宏選)

 

 

(表層意識はいろいろ語る。)