2022年7月25日

 

 ここ1週間(7月23日(土)記)、だんだんインターネットが不調になってきて、月1回の開催を楽しみにしていて、筆者にとって世間との極めてわずかな接触機会であるオンライン飲み会が21日(木)に開催されたのだが、ズタズタに切れてしまい、ほとんど議論に参加することができないハメに陥った。

 素人考えで考えたインターネット不調の原因は、そのころ発生したマイクロソフトのチームズとかいうサービスでの事故の影響(筆者が利用しているのは「ソフトバンク・エア」というWi-Fi)、夏休みに入って自宅で朝からゲームばかりしている子どもたちの急増による電波事情の悪化、2階天井近くに置いてあったWi-Fi機器の連日の猛暑によるダウンであった。

 取り敢えずの対処は、機器のスイッチを切って冷房の部屋で休ませる、機器を置く場所を変えて電波事情のいい場所を探す、SIMカードとかいうものを出したり入れたりして接触不良を解消する、であった。

 動きの悪いパソコンにイライラしつつ、プロフェッショナルの情報を求めてソフトバンクのサービスページを開いてみたが、アンケートのようなものに答えさせられるだけで、さっぱり役に立たなかった。

 22日(金)の夜遅くになって、やや改善が見られるような気がしたので、ソフトバンクが苦情を察知して電波を強化するなどの措置をしたのではないか、などと邪推した。

 以上のようなことで22日(金)は一日中、飯を食う、ルーティンの水泳をする、軽い庭仕事をする以外のことは、すなわち精神労働的なことは一切することができなかった。

 筆者は週初めから、相当な昔に読んだことのあるドストエフスキーの「悪霊」を本棚から引っぱり出して読んでいたのだが、精神の集中がかなわず、それに向かうことができなかった。

 活字なしの日を悔みつつも、順当な大相撲名古屋場所13日目の結果を受け、朝になれば問題は解決しているのではないかと、根拠なき楽観で眠りに就いた。

 

 翌日23日(土)、朝から全然ダメ。受信状況を示す機器のランプ(青3つがベスト、赤は不通)は、赤が点いたり、青1つ(受信弱)だったり、まれに青2つという不安定状況。

 この状況にどう対処したらいいのか、もはや直接相談しかないと判断し、サポートセンターに電話した。

(前日、ソフトバンクの地元営業所に電話したのだが、閉店近くということもあったのか、技術的問題の相談はサポートセンターに、と体よく断られたゆえのサポートセンターへの電話だった。)

 幸い電話はつながったが、こちらの本人確認から始まって、相談員は「これをしましたか?」「あれをしましたか?」というような質問を並べ、ほとんどアンケートに答えさせられるようなものだった。

 こちらの答はすべて「ハイ、もうやりました」。

 質問が終わって「しばらくお待ちください」となり、しばらく待たされたあとの相談員の結論がスバラシかった。

 「それだけなさってもダメと言うことは、そもそも電波環境が不十分なのではないかと思われます。『ソフトバンク光』に替えられたらいかがでしょうか?」

 こちらが、そもそもそれしかないのではないかと思っていたこと、ズバリ的中だった。

 電波状況はOKというそちら側の判断があったからこそ、こちらは「ソフトバンク・エア」を購入したのだから、このまま泣き寝入りはしないぞ、ただでは済まさぬぞ、と思ったが、電話の相手は交渉相手ではないと考え、取り敢えず口に出さなかった。

 筆者の外部とのやり取りはほとんどインターネットであり、赤になったり、青1つだったりの交信不安定のままでは外部とのやり取りをほぼ断念することを意味する。

 このまま世間を捨てて仙境に入り、社会的問題への発言はきっぱりやめて、酔生夢死のコースをとると決断するにはまだ時期尚早の感がある。

 追加出費をある程度覚悟して、しかしできるだけねじ込んで大幅な割引を勝ち取り、「光」に替えることにしよう、こう判断して地元の営業所にその日午後に訪問する予約をとった。

 

 さて、エンジェルスの大谷君10勝目ならず、不運は重なるものだ、などと結びつかない結びつけをしつつ、昼飯の時間となった。

 そして、ふと、サポートセンターの相談員が「送信アンテナはお宅の南西方向にある‐‐‐」と言っていたのを思い出した。

 我が家の南西方向に角を接して、建設会社の2階建てのでっかい事務所兼住宅が先日上棟式を終え、壁材の貼り付けその他の工事を実施中だ。

 土台だけだったのが、骨組みになり、壁材が貼り付けられて、我が家の南西の方向がだんだんと密にふさがれるようになってきている。

 インターネットの不調が徐々に進行してきたのと工事の進行は軌を一にするものではないか。

 まてよ、建設中の建物の東側にさら地があり、そこに南西方向に抜ける空間がある。

 その空間と我が家を結んだところにあたる2階の窓の位置にWi-Fi機器を置いてみた。

 青ランプ2つ!インタネットを開いてみたら、まさに「サクサク」とページが展開していく。

 原因判明で、問題は一挙に解決したのであった。

 電波というものの繊細さに驚かされたとはいえ、わかってみれば何のこともない、単純な原因であった。

 

 お祝いにひとりで音楽を聴くことにした。

 選んだ曲は中島みゆきの名曲、「ファイト!」。

 ほかの曲とは味わいがとっても違う、中島みゆきが社会の最下層によく通じていることを示す名曲だ。

 「♫闘う君の唄を 闘わないやつらが笑うだろう」

 そして、曲中に何度も「ファイト!」の声がかけられる。

 「経済弱者」も、「IT弱者」も、「買い物弱者」も、すべての弱者は弱者たる一事において連帯しなければならない。

 連帯の言葉は「ファイト!」だ。

 

 (その後の鬼子母神咄)

 予定外出費なしで問題は解決したが、「ソフトバンク光」に替えることにしたらどうなっていただろう?

 その場合の経費を知ろうと、地元のソフトバンクの営業所を予約どおりに訪問した。

 こちらの事情説明を聞いた後、女性従業員は長いこと上司と相談していた。

 戻って来ての彼女の話はこちらの特別な事情をまったく反映しない、まったくの一般論のものだった。

 機械の未払い代金が○○円、「光」の工事費が○○円、違約金も必要、とのこと。

 電波大丈夫というそちらの見解があったればこその「エア」購入という経緯は考慮されないのか?とのこちらの質問への答えも彼らの手の内だった。

 そのような扱いは営業所にはいっさい権限がありません。サポートセンターと御相談なさってください。

 「取り付く島もなし」とはまさにこのこと。

 あっけにとられて怒りの湧きようがなかった。

 「なーるほど」などと感心したような発言をしてしまった。

 さすがの、そつのないソフトバンクの客あしらいであった。

 「恐れ入谷の鬼子母神!」

 

 それにしてもサポートセンターの「送信アンテナ南西方向」のひとこと、建設中の建物への気づきがなかったら、「光」の導入による10万円弱の予定外の出費、そもそもつながりにくいサポートセンターとの長引くであろう減額交渉が発生していたわけで、それによる精神的負担はかなりのものであったろうと思う。

 問題解決で今現在のんびりしているわけだが、人間は偶然に支配されている、はかなき存在であるとつくづく痛感をさせられるこのたびの顛末であった。