2021年12月26日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第438回です。

 

 

【俳句】

 

 

鳶(とび)の輪の・大きくゆるく・冬日和 (長崎市 濱口星火)(稲畑汀子選)

 

 

(稲畑汀子さん、朝日俳壇最後の選句。それにふさわしい大きな句。)

 

 

男でも・女でもなき・案山子かな (今治市 横田青天子)(高山れおな選)

 

 

(制作者の意図せざるLBGTQメッセージ。)

 

 

鯛焼きを・恵比寿の如く・抱き家路 (岐阜県揖斐川町 野原武)(高山れおな選)

 

 

(抱き姿が表情に、そして表情が気持ちに及ぶ。)

 

 

つくづくと・マスクは冬に・似合ひけり (千葉市 團野耕一)(長谷川櫂選)

 

 

(年中マスクだったことへの皮肉。)

 

 

再びの・二人暮しに・ラ・フランス (奈良市 川崎和子)(長谷川櫂選)

 

 

(「ラ・フランス」で暮らしが一挙におしゃれになる。ところでいかなる意味での「再びの」なのだろう?)

 

 

【短歌】

 

 

傾いた・タイタニックの・甲板で・10万円を・子どもに配る 

                               (阪南市 岡本文子)(高野公彦選)

 

 

(風刺の鋭さに感嘆する!)

 

 

「目の下に・眉毛があるよ・この選手」・日本シリーズ・だけは観る母

                               (東京都 伊藤直司)(永田和宏選)

 

 

(意図せざるところに生まれるユーモアこそ、真のユーモア。)

 

 

猫舌の・私にちょうどの・カフェラテを・飲み人生を・考えている 

                              (富山市 松田わこ)(馬場あき子選)

 

 

(冷静なる自己批評。「やけくその・俺にちょうどの・ホッピーを・飲み人生を・考えている」というのは批評性に乏しい。)