2021年8月3日
題名では「リフレ派」としたが、代表として名を借りた。
経済成長優先の立場に立ち、経済成長のためには投資が必要であり、投資が促進されるためには次のような条件が必要であると主張する人たちである。
「現代金融理論(MMT)」もこの仲間といえるだろう。「財政再建楽観派」もそうであろう。
的確な名称ではないが、取り敢えず「リフレ派」と呼んでおきたい。
すなわち、彼らが投資促進のために必要とする条件とは、
1 金融の緩和(資金調達コストの低水準)
2 物価の上昇(製品価格の上昇期待)
3 規制の緩和(投資先制限の解除、原材料・労賃コスト等の引下げ)
そしてこれらの人々は、しばらく前までは、どのような投資が行われるかは民間にゆだねられるべきであって、政府が産業構造に介入すべきではないという立場をとっていた(市場原理主義、新自由主義)。最近はデジタルだとかグリーンだとか言って特定の分野に政府が積極的に支援することを奨励している。
以上のような条件が投資を促進するものであることは、少し説明をすれば小学生でも理解することができる。
投資理論というのも恥ずかしい、当り前のことを並べたに過ぎない。
しかし、「リフレ派」の投資理論は、どうやらこれに尽きるのである。
経済学の名に価するものではない。
経済学の名に価する投資理論たるためには、次の問題についての解明が必要である。
1 上に掲げた4条件(3+1)について同様の状態にあっても国によって、社会によって、時代によって、投資が行われる規模・分野は大いに異なる。その原因は何か。
2 投資は成功と不成功がある。貴重な制約ある資源が不成功となる投資のために無駄に費消されることがないように、投資の選別を社会は行う必要がある。どのような方法が適当か。
この2つの設問を意識することさえすれば、「リフレ派」は直ちに自分たちの主張を一時中断し、しかるべき投資理論の構築に努めようとするはずだ。
自分たちのこれまでの主張は一時避難的な緊急対策にとどまることを自覚するはずだ。
一時避難的緊急対策であって、サドン・デスに至らないための塩水注射、痛みを和らげるための鎮痛麻酔薬のようなもので、健康回復につながる方策ではないということに気づくはずだ。
健康回復なしの塩水注射、鎮痛麻酔薬の継続は、徐々に社会の体力を低下させ、日本経済の健康回復の可能性を奪っていく。
「リフレ派」の優秀な頭脳が、知的誠実性をもって、再出発することを期待したい。
(「リフレ派」の一部にはその主張の一時緊急避難性の認識があると思われる。しかし、その一時緊急避難性が常習化してしまうこと(すでに政界に発生しつつある。コロナ対策も悪い効果を呼んでいる。)による日本経済劣化の危険への認識が甘いのではないか。)