2021年7月15日

 

 刑法177条(末尾に条文)のいわゆる性交同意年齢(一律に性交が禁止される年齢)の引上げに関する発言で立憲民主党の本多衆院議員が党員資格停止処分を受け、次期衆院選でも党公認を得られないという事態に至っている。

 本多議員の発言自体は不適切な表現振りで問題があるのかもしれないが、性交同意年齢という制度の不十分性の指摘とすれば、その不十分性への対応を迫るものであり、それなりの意味はあると考えるべきであろう。本多発言の前の段階で、政府の審議会においても同様な問題の指摘はあったもようである。

 すなわち、「真摯な恋愛」というものが十分にあり得る年齢について一律に刑法による犯罪とするのはいかがなものかという指摘である。

 

 「真摯な恋愛」というものを法律的に耐えられる表現とすることが可能であれば、「真摯な恋愛の場合を除く」というような措置によって、指摘された問題は回避できるはずであり、そのほうが立法の趣旨に合致したものであるはずである。

 そのような条文を考案することこそ、法の発展というものではなかろうか。

 憲法9条のもとで集団的自衛権の行使を法的に可能とするような悪知恵(これは法の発展とは言えないが)をひねり出した優秀な立法官僚であれば、刑法177条をよりすぐれた条文とする何らかの知恵が出てくる可能性はあるのではなかろうか。

 残念ながらそのようなことがいかなる知恵をもってしても可能ではなかったという場合に、被害者の発生を防ぐためのやむを得ない対応として性交同意年齢という制度は正当化されることになる。

 それはあくまでも妥協としての制度であるという認識が必要である。

 

 以上のような事情を考えれば、本多議員に対する立憲民主党の処分は重過ぎると感じざるをえない。

 選挙の勝利ためならば、PTA的な常識が生む非常識に安易に乗ってしまうというようなだらしない体質がこの処分の背景にあるように見えることを、立憲民主党のために悲しんでいる。

 

(参考)(強制性交等)

第177条

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。