2021年5月30日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第408回です。
【俳句】
明るさは・雨にもありて・樟(くす)若葉 (岡山市 伴明子)(稲畑汀子選)
(新緑の中に、とりわけ樟の若葉の目立つ。)
草笛の・少女音符の・やうに来る (厚木市 北村純一)(大串章選)
(跳ねているさまが目に映る。)
春宵(しゅんしょう)の・演歌に悟る・憂き世かな
(船橋市 斉木直哉)(大串章選)
(悩みも悟りも演歌を超えない人生のほうがむしろ憂し。)
主語の無き・女の会話・春の昼 (香川県琴平町 三宅久美子)(高山れおな選)
(日本人一般へのファンダメンタルな批判です。)
【短歌】
掌(て)の上に・止めた時間を・ふと浮かせ・鋭く放つ・石川佳純
(可児市 前川泰信)(佐佐木幸綱選)
(緊張の瞬間を歌い止めた。)
20キロ・南は誰も・住めぬ町・朝日射しても・起きる人なく
(南相馬市 佐藤隆貴)(高野公彦選)
(「異常」を朝日が射しても起きる人がいないという「無気味さ」に捕まえた。)
枇杷の実を・竹籠に負う・少年と・島の天主堂の・道に逢いたり
(交野市 西向聡)(永田和宏選)
(一首に孕まれる情報量の多さ、学ばれるべし。)
ゴリゴリと・ブリブリバリバリ・なおビクビク・炎夏冷汗・東京五輪
(東京都 武田五郎)
(いずれの方面かで犠牲者が出ることをおそれる。)
やせ蛙・ではないけれど・朝乃山・阿炎竜電みな・負けるな、戻れ
(松戸市 田村信三)
(一茶ならずともそのように声を掛けたい人、多数であろう。)