2021年5月29日
報道によれば、与野党での事前協議もなされていた「LGBT法案」の国会提出が自民党で事実上断念されたとのことである。
保守系議員の根強い反対によるとのことであり、表面的な反対理由はいろいろとあげられているが、表面的な反対理由とは別に、反対者の本音があることは周知のことであろう。
そしてその本音は、自民党の保守系議員のみならず、いまだ多くの国民のものでもあるというのが否定しがたい事実である。
問題は、反対論者が本音を表面に出してこないため、本音対本音、本音の背景にある世界観対世界観、の議論がなされないこと、また反対論者の事実認識における誤りが放置されたままとなっていることである。
今国会での提出断念は残念であるが、大勢は決しており、「LGBT法案」の成立は時間の問題である。
しかし、本音対本音、世界観対世界観の議論がなされず、事実認識の誤りが放置されたまま、多数決の結果として「LGBT法案」が成立するということは、たとえ法案が成立したとしても、LGBTについて十分な理解に至っていない多くの国民が取り残されたままになるということになる。世の中では引き続き問題が発生しつづけるであろう。
この際、自民党内の「LGBT法案」の推進勢力は、国会提出が断念されたことを貴重なチャンスとして、党内反対派から本音を引き出し、事実認識の誤りを克服した上で本音対本音の議論が展開するように努力すればいいのではなかろうか。
そうなれば自民党はこの問題について、国会提出断念という失点を取り返し、他党に先んじる立場に立つことになる。
先ごろ二階幹事長の「他山の石」発言が問題となったが、今度は文字どおり「自山の石もって玉を攻(おさ)むべし」という新機軸はいかがだろうか。