2021年3月21日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第398回です。

 novさんのさし絵は「3月は卒業式」。

 

 

【俳句】

 

 

春一番・新聞紙飛ぶ・記憶飛ぶ (埼玉県皆野町 宮城和歌夫)(大串章選)

 

 

(あっけらかんと忘れてしまえ。)

 

 

エッセンシャル・ワーカーだとさ・多喜二の忌  (奈良市 小山寿美代)(高山れおな選)

 

 

(ことばで誤魔化す薄汚き世。)

 

 

集へるを・喜び合うて・浅き春 (浜田市 田中由紀子)(稲畑汀子選)

 

 

(「浅き」が「春」に掛からず、「喜び合う」関係に掛かってしまうように読むのは、小生の精神の不健全か。)

 

 

春愁や・一円相の・筆遣ひ (東京都 三輪憲)(長谷川櫂選)

 

 

(禅の世界に春愁など‐‐‐)

 

 

【短歌】

 

 

ヌ~君と・トリアちゃんとが・泳ぐ川・ここがふるさと・外来種でも 

                               (福山市 倉田ひろみ)(高野公彦選)

 

(ヌートリアへのこの命名により、ヌートリアはこれからペアでの行動を強いられる。ペアでの姿はまずないが。)

 

 

炭焼きの・父の土産は・ふくらめる・白き辛夷(こぶし)の・枝の一本 

                              (米沢市 青柳ひろ江)(高野公彦選)

 

(ひとり山の奥で働いているときも家族を忘れないでいた。)

 

 

サーブする・大坂なおみは・手を止めて・寄り来る蝶の・キスを受けたり 

                              (酒田市 大橋敏子)(馬場あき子選)

 

(大坂なおみ、詠われること多し。「キスを受けたり」で「らしさ」がいちばんよく出た。)