2020年9月6日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第371回です。

 今回の「nov.」さんのさし絵は「9月6日はカラスの日」。カラス=CROW=9・6ということなのだろうが、ホントにそんな日はあるのだろうか?

 

 

【俳句】

 

 

口紅に・氷金時・吸い込まれ (深谷市 横澤芳一)(高山れおな選)

 

 

(色彩的、触感的、温度的対比において艶にして妙。)

 

 

睡蓮に・似合ふ静寂・雨の降る (岡山市 伴明子)(稲畑汀子選)

 

 

(静寂が似合うから「睡蓮」と名づけられたのだろうか、「睡蓮」と名づけられたから静寂が似合うのだろうか?)

 

 

さて今日は・誰を忘れんか・茗荷汁 (藤沢市 朝広三猫子)(長谷川櫂選)

 

 

(忘れられたら、それは永遠となる。)

 

 

【短歌】

 

 

殺したとも・殺さなかった・とも言わず・将校だった父・いのちを畳む 

                                 (霧島市 久野茂樹)(永田和宏選)

 

 

(何人の日本人が人を殺すことになったのかの数字がない、人を殺した経験を語る語り部がいない。反戦運動の重大な不十分性。)

 

 

ゲバ棒を・かつて持ちたる・右腕の・これはその骨・焼かれし畏友(とも)の 

                                (西条市 村上敏之)(永田和宏選)

 

 

(それだけとしてしか記憶されない不幸。とはいえ、次の一首へのコメントのとおり。)

 

 

戒名を・遺族に請はれ・異教徒に・そを授けしも・僧の生業(なりわい)

                                (東根市 庄司天明)(馬場あき子選)

 

 

(死者はこの世にもはや無拘泥、残骸は遺族のもの。だからそれでいいのだ。)

 

 

新聞に・ヘイトスピーチの・文字あれば・痛みを覚悟・して読み進む 

                                 (神戸市 康哲虎)(高野公彦選)

 

 

(ヘイトスピーチをする奴らをヘイトする何かいい呼び名はないものだろうか。例えば「寝小便野郎」、自立できていないという意味で。例えば「チチンプー」、飛んでけという意味で。)