2020年7月19日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第364回です。
今回もさし絵に「nov.」さんの作品が掲げられていました。「海の日」でした。クイズになっています。
【俳句】
端居(はしい)して・流転の過去は・語らざり (狭山市 新村公男)(稲畑汀子選)
(男のつっぱり。聞く者もおらず、語る内容もないというのが実情だ。)
蟻地獄・誰にも有りぬ・運不運 (京都市 奥田まゆみ)(稲畑汀子選)
(そうなのに、本人の不道徳、努力不足などのせいにして人を責める昨今の風潮、きらいだ。)
人生を・語る媼(おうな)や・夕端居 (船橋市 斉木直哉)(大串章選)
(選定第1句と違い、こちらは女性の苦労話、聞く者もいる、内容もある。男苦労などもからめば、さらに。)
漂へど・海月自死する・ことはなし (富士市・村松敦視)(高山れおな選)
(「漂へど」と逆接になっているが、自己を捨てて漂うだけだからこそ海月は自死することはないのであって、順接にするのが正しい。)
【短歌】
否定から・入る口癖・気づいてる?・君の言い出し・いつも「っていうか」
(枚方市 東大路エリカ)(佐佐木幸綱選)
(自信がない、反論がこわい、借り物のことばだから、男の質的低下。)
僕は何も・していないだけど・苦しくて・拉致被害者の・顔を見れない
(神戸市 康哲虎)(高野公彦選)
(いささかでも安逸感を享受できている人間は、この世の理不尽のすべてに対し、加害者性を逃れえない。)
孫自慢・病気自慢の・女子会は・行くこともなし・梅しごとあり
(安中市 岡本千恵子)(高野公彦選)
(自己を客観視できる人の孤独。なお、安中市は梅の名産地。)