2020年4月12日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第350回です。
【俳句】
青麦や・今朝も列車に・手をふる子 (西東京市 芹沢嘉克)(大串章選)
(この景色の中には無垢しかない。)
禁足の・街の高くに・春の月 (野田市 松本祐一)(長谷川櫂選)
(月にしてみれば、下界はいったいどうなっちゃったんだろう、という感じだろう。)
【短歌】
居場所無き・人ほぼ定位置を・占拠して・日の暮るるまで・過ごす図書館
(松山市 吉岡健児)(馬場あき子選)
(その図書館が閉鎖というのだから、どうしたらいいのか。)
こうやって・戦争もはじまって・いくんだろう・ここ一、二週間が・瀬戸際ですと
(東京都 菅宮真樹)(佐佐木幸綱選)
(「瀬戸際」「生命線」「存立危機」、こういう言葉に抵抗することができるか。今回の事態はその思考実験でもある。)
大和路の・宮殿跡に。かがまりて・休校の児ら・たんぽぽを摘む
(奈良市 宮田昌子)(佐佐木幸綱選)
(俳句に登場の青麦の子も休校だったのかもしれないと気づく。)
この世ならぬ・奇蹟をふたり・歩み来て・禁足の街に・静かに別る
(東京都 広田久二)
(コロナ禍の下で人の知らないドラマが展開している。)