2020年3月29日

 

 

朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第348回です。

 

 

【俳句】

 

 

初めての・バイトはパン屋・春の風 (神戸市 藤井啓子)(稲畑汀子選)

 

 

(社会人初体験がいいスタートと聞くと、こちらもうれしくなる。)

 

 

目刺し焼く・任地去る日の・近づけり (長岡市 内藤孝)(稲畑汀子選)

 

 

(この間をどう評価したらいいのか、目刺しを焼きながら考えている。)

 

 

あれは春の・風邪と笑へる・日を待ちぬ (芦屋市 瀬戸幹三)(稲畑汀子選)

 

 

(わかってはいるが、現実は現実。)

 

 

時疫(ときのえ)に・心ならずも・春ごもり 

(横浜市 日下野禎一)(高山れおな選)

 

 

(新型コロナをこう呼べることを教えられる。いずれにしても、この時点ではまだのんき。)

 

 

【短歌】

 

 

ゆっくりと・顔を左右に・向けながら・プロンプターを・上手に読む人 

           (小郡市 嘉村美保子)(高野公彦選)(永田和宏選)

 

 

(首相のこと。プロンプターとはこちらからは透明だが、首相の側からは字が浮かび上がるカンニング装置。演説しているようで読んでいるのだ。)

 

 

父の日の・プレゼント着て・空港に・立つ父よそれ・ナイトガウンです 

(さいたま市 飯塚瑠美)(高野公彦選)

 

 

(これを短歌にすることまで含めて総合的にいい父娘関係だ。)

 

 

いつの間にか・問答無用の・首都五輪・抗うべからず・ひざまづくべし

 (小松島市 森田喜三次)

 

 

(東京五輪の危機、それをめぐる狂騒に対して、短歌の世界では批判が健在だ。)

 

 

号令を・受けて右にも・左にも・行くぞ動員・コロセウムの民 

(神戸市 小田切千代)

 

 

(国家総動員に元気な対応の報道ばかりだ。)

 

 

オリパラてふ・大義の戦車が・疾走す・踏み潰さるる者(しゃ)・知んぬ多少ぞ 

(東京都 武田俊一)

 

 

(怖い。)