2019年12月8日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第332回です。
【俳句】
人の世の・音を遠くに・山眠る (尼崎市 ほりもとちか)(長谷川櫂選)
(作者は山と共にあり、か。)
すぐそばに・莟(つぼみ)も一つ・返り花
(東京都府中市 保坂倶孝)(長谷川櫂選)
(小さな発見、大きな喜び。)
連絡は・せぬと連絡・冬籠り (神戸市 金沢健)(高山れおな選)
(世捨て人という言葉があるが、なかなか世は捨てがたい、か。)
照ノ富士と・しぶこを今年は・得て師走 (安中市 高田喜六)
(失うものが多い昨今、御同慶の至り。)
【短歌】
山並みに・ビルに林に・朝日射す・作業車を駆る・吾も風景
(富山市 徳永光城)(佐佐木幸綱選)
(このような自己肯定はめずらしいのではないか。学ぶところあり。)
少しずつ・咀嚼(そしゃく)していく・ほかはない・なかったことに・できぬ悲しみ
(堺市 一條智美)(高野公彦選)
(自分を詠う歌が案外少ないが、自分を詠うことが重要だ。)
足にイボ・液体ちっ素・迫りくる・ゴジラの曲が・心でなってる
(東金市 矢口由依)(永田和宏選)
(これも自分を詠っている。自分は詠われるべき詩情に充ちているのだ。)