2019年6月30日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第309回です。
【俳句】
青春の・混濁未だ・桜桃忌 (横浜市 田中清春)(大串章選)
(否定的意味での青春が続いている。ところで何と何が混濁していたのだろう?)
篤農の・植田はやばや・風を呼ぶ (熊本市 山澄陽子)(大串章選)
(苗がそよぐので風がわかる。)
長靴の・園児の列や・梅雨入(つい)りする (大阪市 行者婉)(稲畑汀子選)
(梅雨入りを「ついり」と読めるのがうれしい。)
夏草と・夏草分かつ・小径かな (青森市 小山内豊彦)(長谷川櫂選)
(踏み固められているせいだろうか、自然と草の生え方がちがう。そういう道を知っているだけで価値。)
【短歌】
癌の身の・舞茸揚げて・いそいそと・九十路(ここのそじ)ひとりの・夕餉(ゆうげ)にむかう
(町田市 佐原京子)(高野公彦選)
(癌だろうと、九十だろうと、ひとりだろうと、「いそいそ」。この「いそいそ」が人生の本質なのかもしれない。)
水を張り・鏡となった・田おもてに・船団みたいな・雲わたりゆく
(三田市 相良たま)(佐佐木幸綱選)
(縁取りのある画面だからちがって見える。)
基地愛す・我が街愛す・六十年・戦(いくさ)を見ずに・元自衛官我
(三沢市 遠藤知夫)(佐佐木幸綱選)
(殺される危険にも遭わず、人を殺しもぜずに来られたという感慨。もしそうでなかったら「愛す」という言葉を発する晩年を迎えられなかっただろう。)