2019年6月16日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第307回です。

 

 

【俳句】

 

 

美女なれば・暑し暑しと・いふまじく (川崎市 小関新) (稲畑汀子選)

 

 

(美女は美女という字だけで美しい。それにしても期待水準が高く、注文が多くて、美女も大変だ。)

 

 

竹婦人・ブラックホールに・吸い込まる (福山市 長谷川瞳) (高山れおな選)

 

 

(「竹婦人」、寝具の名前だが、大胆な命名だ。いいのだろうか?)

 

 

 

【短歌】

 

 

食べ終へし・蚕はしばし・瞑想す・からだ黄に透き・糸を吐くまで 

(前橋市 荻原葉月)(馬場あき子選)

 

 

(養蚕家でなければ知らない世界。)

 

 

並びすわる・若き同僚の・二の腕が・西陽に輝(ひか)る・職員会議 

(町田市 村田知子)(佐佐木幸綱選)

 

 

(退屈な会議の中で唯一心を動かすものはこれ。)

 

 

今日は輪投げ・明日はぬり絵の・デーサービス・死をあくがれの・如く待ちつつ 

(袋井市 松井敦子)(佐佐木幸綱選)

 

 

(この人は輪投げやぬり絵などしていてはいけない。)

 

 

路上芸・おきもちの箱・抱きかかえ・小銭集めて・弁当を買う 

(名古屋市 えぐれ笹島)(佐佐木幸綱選)

 

 

(詩情ただよう生活歌がここでは成り立っている。)

 

 

海の中・クラゲは泳ぐ・ふわふわと・脱力系に・生きて行きたい 

(大阪市 前田真智佳)(佐佐木幸綱選)

 

 

(ジャマをするのは大脳だ。その大脳とは自分自身。)

 

 

国籍は・どうでもいいと・嘯(うそぶ)けば・老いたるアポジ、・オモニが黙る 

(神戸市 康哲虎)(高野公彦選)

 

 

(我々は他者の記憶も背負って生きている。)