2019年5月19日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第303回です。
【俳句】
(人はある限界を超えた美に接すると、それに圧倒され、支配されてしまう。「牡丹」はしばしばそれとなる。という3句。)
白牡丹・大きく今日の・日を終る (奈良市 田村英一)(稲畑汀子選)
牡丹に・憑かれ疲れて・しまひけり (泉大津市 多田羅初美) (稲畑汀子選)
牡丹咲く・ひねもす胡蝶の・夢のうち (姫路市 前田隆弘)(長谷川櫂選)
公園に・春愁の顔・またひとり (厚木市 北村純一)(長谷川櫂選)
(厳しい冬を乗り越えてきたが、いったいそれは何だったのだろう、と思ってしまうのが春愁。)
寂声の・講釈ついて・浅蜊売 (船橋市 武藤みちる)(高山れおな選)
(形而上と形而下の接点に生じる俳味。)
【短歌】
寒村に・九条守れの・看板を・立てて孤老は・畑耕す
(さいたま市 海野照美)(馬場あき子選)
(世の中に諦めることは多いけれど、これだけは諦めることはできない、という強いメッセージ。)
子との散歩・途中でたんぽぽ・教えれば・たんぽぽの花・探す旅になる
(新座市 石田優子)(高野公彦選)
(旅に名所旧跡はいらない。)
九十を・過ぎたる男(ひと)を・「ちゃん」づけで・呼びいし日終わる・さよなら為(ため)ちゃ
(飯田市 草田礼子)(永田和宏選)
(「青春」の終りの絶唱。)