2019年4月21日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第299回です。

 

 

【俳句】

 

 

一車両・丸ごと・春眠の虜 (神戸市 湧羅由美)(稲畑汀子選)

 

 

(老子的理想状態。「帝力何ぞ我にあらんや」。)

 

 

春の水・鯉やはらかく・後ずさり (高松市 村川昇) (長谷川櫂選)

 

 

(目的合理性などというものがないところに、それを許すところに春の良さがある。)

 

 

花人の・中にねむれる・乳母車 (横浜市 山本幸子)(大串章選)

 

 

(願わくば筆者もその立場に居たい。)

 

 

時計屋の・向かひに床屋・春の夕 (東村山市 新保方樹)(高山れおな選)

 

 

(実に当たり前の景色のようで、そうでもなくなっていることに気づく。)

 

 

【短歌】

 

 

お手伝い・やれることなら・任せてね・ぼくの時間も・君の時間 

(八王子市 エニー・ラハマン)(高野公彦選)

 

 

(留学生の作だそうだ。恋愛歌は作為なきものがいい。)

 

 

我が名さえ・忘れし我は・我が名持つ・我と言うべき・存在なりや 

                                                     (徳島市 内田源一)

 

 

(重度認知症に至った場合の自分を思う。)

 

 

人格は・切れても同一・肉体の・別人格に・親しみを持つ (徳島市 内田源一)

 

 

(前歌からすれば親しみの対象は自分ではなくなった自分。)