2019年4月2日
平日の朝5時から8時、NHKラジオ第1で「マイあさラジオ」という番組が放送されていた。4月になって「マイあさ!」という番組になった。変更の目玉は66歳の退職後のアナウンサー三宅民夫の起用である。紅白の司会も務めた(たしか歴史に残るような失敗をやらかした)、愛嬌のある顔の、娯楽番組もやれば真面目な討論番組もやる、たぶん好感度が高いとされている有名アナウンサーである。朝の忙しい時間帯で、途中にラジオ体操があったりなどして、到底集中して番組を聴ける時間ではない。そこに大物といえる、超ベテランアナウンサーが投入されたのである。
筆者は瞬間に感じた。この番組変更、三宅民夫の投入にはNHK上層部の政治性のある意志がある、と。
まだ、数日しか経過していないので、筆者の直観がどれだけ当たっているのかは、まだまだわからない。
しかし、はっきりした内容変更が行われた時間帯もあるので、その一端はすでに現われたと言えるのではないかとも思う。
その一端とは、ラジオ体操、ニュースのあと、6時45分から10分程度だった「社会の見方、私の視点」という番組が「マイBiz」という番組に代わったことである。
「社会の見方、私の視点」は、政治、社会、経済、国際情勢等々広い分野にわたり識者、専門家が自分の考え方を披露する番組であった。筆者の感覚では右から左まで実に幅広い人々の登場であった。内橋克人、金子勝、木村草太と上げれば左サイドの傾向は察しがつくであろう。この「社会の見方、私の視点」が経済情報に特化した「マイBiz」という番組に代わったのである。
人々は世の中を経済視点から見るように誘導される。経済視点から世の中を見ることは大事なことである。しかし、外交・防衛問題、政争・政治的スキャンダル、いじめ・虐待、引きこもり等の社会問題など現下の枢要な問題はすっぽり抜け落ちてしまうことになる。何よりも憲法改正が取り上げられない。争点を取扱わない、争点を回避するという態度がこの番組変更に「見え見え」なのである。「マイBiz」という番組名では経済視点と言っても限定がかかるような気さえする。事実、昨日か今日か、新商品の紹介のような内容が放送されていて、朝からNHKが消費宣伝、消費刺激かよと反発をおぼえさせられた。
NHKは憲法改正問題を前にして人々の非政治化、非社会化を図ろうとしている、もうけと浪費への関心に誘導している、国民の愚民化をめざしている、と言ったら断定が過ぎるだろうか?「木を見て森を見ない」ということになるだろうか?
一見誠実そうな三宅民夫のスマイルと正直そうなアナウンサー美声が無気味でならない。