2019年3月4日
朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第292回です。
【俳句】
雪とけて・村いっぱいの・放射能 (いわき市 馬目空)(長谷川櫂選)
(第3句の予想外の裏切りに世間の無視・裏切りに対する怒りがある。)
会陽(えよう)果て・修羅の大床・残さるゝ (玉野市 勝村博)(長谷川櫂選)
(会陽とは岡山・西大寺の裸祭り、戦いの勝者に賞金が出る。終了後の寺の大床にその金欲の荒廃が見える。)
血管は・さらさら春の・小川かな (海南市 楠木たけし)(大串章選)
(我々は肉体という最も身近な景色を持っているのだった。)
淋しさは・云はず・紅梅称へ合ふ (荒尾市 鶴田幾美)(稲畑汀子選)
(集団の中の孤独。)
【短歌】
先ぱいの・名前わからず・五日目も・トロンボーンの・人とよんでる
(東金市 矢口由依)(佐佐木幸綱選) (高野文彦選)(永田和宏選)
(そして、短歌に詠んでおく。この青春の距離感がいい、なつかしい。)
その人の・死ぬといふこと・その人の・見たる世界の・消ゆといふこと
(久留米市 塚本恭子) (永田和宏選)
(我々は個々に違う世界に生きている。神なき我らの時代、孤独に耐えるべき我らの時代。)
核も基地も・九条も・原発もなお・終わらざるまま・桜咲く国
(福島市 美原凍子) (馬場あき子選)
(「世の中にたえて桜のなかりせば」これらの問題はもっと議論され、もっと詰められていたであろう。桜は日本人のいい加減さの象徴だ。)