2018年10月28日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第275回です。

 

 

【俳句】             

 

 

よきことの・予感に林檎・むいてゐる (松戸市 高瀬竟二)(稲畑汀子選)

 

 

(予感があったので林檎をむく気になったのだろう。食生活にはそういう面がある。)

 

 

秋風や・どこか遠くへ・来たやうな (八代市 山下さと子)(稲畑汀子選)

 

 

(四季とは移動を伴わない旅。)

 

 

無月とて・一夜美し・かりしかな (久喜市 斉藤たみ) (長谷川櫂選)

 

 

(無月という月を見る。)

 

 

一生に・一度の手紙・書く夜長 (新座市 渡辺真智子)(長谷川櫂選)

 

 

 (そんな時に俳句を考えられるものだろうか?)

 

 

秀吉を・横抱きにして・菊師かな (塩尻市 古厩林生)(大串章選)

 

 

(このような発見ができる精神、これこそ宝。)

 

 

先陣を・競ふ城壁・蔦紅葉 (福岡市 下村靖彦)(大串章選)

 

 

(そういうふうに見るとそういうふうに見える。そういうふうに見ることができる精神、これも宝。)

 

             

【短歌】

 

 

梨畑は・野となり二年・積むままの・梨の薪(たきぎ)に・入日漂う 

(福島市 青木崇郎)(馬場あき子選)

 

 

(過去の自分の残骸に向き合う、それができるためには何かが要る。)

 

 

住所録・捨てアルバムを・捨てて今・己れのほかに・捨つるものなし

 (福岡市 杉野順子)(高野公彦選)

 

 

(住所録、アルバムを捨てるということは己をもう捨て始めているということだろう。)

 

 

汚染水・八十九万トンの・タンク群・上空には八・年目の秋雲 

(福島市 美原凍子)(高野公彦選)

 

 

(地上と上空に同じような図柄が広がっている、と悲しくも受けとめられるようになったフクシマ。)