2018年9月16日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇等からの印象句、印象歌の報告、第269回です。

 

 

【俳句】

 

 

水底に・沈めし記憶・水澄めり (東大阪市 矢田悠子)(長谷川櫂選)

 

 

(忘れさろうと思いつつも肯定的な思い出、とはいったいどんな思い出なのだろう。)

 

 

思考力・蒸発したる・残暑かな (横浜市 小川龍雄)(稲畑汀子選)

 

 

(では残暑がなくなれば思考するか、と考えれば、やはり思考していないことに気づく。)

 

 

【短歌】

 

 

OB会の・幹事をすれば・唐突に・意地でも行かぬと・いうやつが出る

 (東京都 野上卓)(永田和宏選)

 

 

(そのこだわりは幼児じみてはいるが、もう歳なのだから無理をすることもなかろう。)

 

 

ベランダの・青きあさがお・青き鉢・一年生の・夏休み逝く 

(帯広市 小矢みゆき)(馬場あき子選)

 

 

(最後の2文字に我が目を疑う。)

 

 

縄文の・火炎激しく・立ち昇り・濁世の者たち・これにひれ伏す 

(岡山市 織田十佐)

 

 

(縄文時代は弥生時代の一時代前とのみとらえるべきではなく、一大文明であったと考えるべきであろう。)

 

 

《特別:港家小柳師匠追悼歌》

 

 

深川の・裸祭りの・由緒(もと)語り・小柳師匠・手を振って去る

 

 

何遍も・清香となって・太刀山に・声援送った・小柳師匠逝く

 

 

幕引きを・惜しんで手を振る・ならいなり・小柳師匠・最期の幕引く