2018年8月17日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第264回です。
今回は8月12日(日)に掲載されたものからの印象句、印象歌です。
【俳句】
蝤蛑(がざみ)てふ・地球の青の・一破片(ひとかけら)
(横浜市 日下野禎一)(高山れおな選)
(茹でてしまえば赤くなってしまうが、がざみには鮮やかなショッキング・ブルーがある。)
峰雲の・生みたる一機・着陸す (熊本県菊陽町 井芹眞一郎)(稲畑汀子選)
(雲の中から突然現われる感じは「生みたる」となる。)
サングラス・掛けて男の・顔となる (亀山市 鈴木秋翠)(稲畑汀子選)
(目線が弱くて、素顔では男になれない男が多い現実。)
老人に・なってしまひし・裸かな (秋田市 中村榮一)(長谷川櫂選)
(気は若くても、体を鍛えても、如何ともしがたい肌の張り。)
小さくて・朝から元気・しじみ蝶 (横浜市 山本幸子)(長谷川櫂選)
(用事が多いので、ぐったりしている暇なんかないんだね。アリなんかも同じ。)
【短歌】
行きたしと・思へど遠し・辺野古集会・車をもたぬ・やんばる暮らし
(沖縄県 和田静子)(高野公彦選)
(権力を甘やかしたらいくらでもつけあがってくる。御都合主義の犠牲とされる庶民の造反は常に有理なのだ。)
「途方に暮れる」・という表情の・撮れるまで・被災者の顔・這いいるカメラ
(水戸市 中原千絵子)(永田和宏選)
(取材するカメラの目線は人々の「常識的思い込み」の象徴的現われにすぎない。我々は人々の「常識的思い込み」という暴力にもっともっと広範にさらされている。「絶縁」、これが解決策なのだが。)
熱帯夜・アンリ・ルソーの・森が呼ぶ・濃密な闇・あの白い月
(松阪市 こやまはつみ)(馬場あき子選)
(熱帯夜を詩にするにはその「密度」への気づきが必要だった。)