2018年3月12日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第242回です。
【俳句】
白梅の・咲き重なりし・青さかな (西宮市 児山綸子)(稲畑汀子選)
(事実が事実だけで詩になる、とは何なのだろう。)
出かけたく・なき日は春の・風邪をひく (福岡市 松尾康乃)(稲畑汀子選)
(作り鼻声のお断りに色気が漂う。)
鍵かかる・机嬉しき・入学児 (京都市 久世幸子)(長谷川櫂選)
(個人として認められたという喜び。それを喜びと感じる本能が人にはある。)
友だちと・呼ぶには若し・春苺 (横浜市 山本幸子)(長谷川櫂選)
(相手は小学校低学年だろうか。いや、相手が男性だとすると中高生か。)
胎内の・命に春の・日差しかな (東京都 大木瞳)(大串章選)
(こういう経験の句集が編まれてもよい。)
【短歌】
最近の・母は何でも・「半分こ」・でもいつも私の・方が多い
(藤枝市 菊川香保里)(永田和宏選)
(素直に、ためらいなく、こういうことが受け入れられる年齢というのがある。ここにとどまればいいのだが。)
春が来て・街の時計屋・ひつそりと・閉店セールの・幟(のぼり)しまひぬ
(東久留米市 関沢由紀子)(馬場あき子選)
(ひつそりと、悲しいことが世間の喧騒の裏でたくさん起きている。それに気づかされることに歌壇の価値のひとつがある。)
鬼だけど・パパだからねと・四歳が・二歳にそっと・豆を渡しつ
(越谷市 黒田祐花)(高野公彦選)
(このころからもう幼児にオトナの心が芽生えているのだ。プライドも伴っている。)