2018年2月19日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第239回です。

 

 

【俳句】

 

 

冴え返れ・兜太戦後を・終はらすな (鹿児島市 青野迦葉)(長谷川櫂選)

 

 

(俳壇選者金子兜太さん、お休み中。「戦後」を伝えるべき多くの人の名を「兜太」のところに挿入したい。)

 

 

仲見世の・人並み消えし・寒夜かな (東京都 家泉勝彦)  (大串章選)

 

 

(盛り場でも夜の早いところと遅いところがある。それがわかるのは呑兵衛だ。)

 

 

梅咲いて・村いつぱいの・媼(おうな)かな (霧島市 久野茂樹)(大串章選)

 

 

(当世地方事情。いずれにしても華やかなり。)

 

 

【短歌】

 

 

墨色の・風呂敷のような・夕闇が・雪深き集落(むら)を・いま包みゆく

 (越谷市 黒田祐花)(佐佐木幸綱選)

 

 

(電気の少ないところで味わえる夕。)

 

 

積もりたる・雪の歩道を・鶺鴒(せきれい)は・雪突(つつ)きつつ・小走りに行く

(千葉市 笹倉童心)(佐佐木幸綱選)

 

 

(せきれいは寒くても実に元気で忙しそうだ。)

 

 

有る物が・あるべき所に・いつも在る・目の不自由な・彼の生活 

(山梨県 笠井一郎)(佐佐木幸綱選)

 

 

(知っている何人かがそうなっていると最近聞いた。他人事ならず。)

 

 

「アベ政治を・許さない」人・病みたまう・アベ政治なお・続く厳冬 

(水戸市 中原千絵子)(高野公彦選)

 

 

(金子兜太氏の書が新安保法制反対運動の象徴として使用された。再使用は今夏からか。)

 

 

八十に・なりてもオファー・かかりきて・朝早くより・蜜柑摘みする 

(西予市 大和田澄男)(高野公彦選)

 

 

(「オファー」なる言葉がその世界で活躍しているとは、ほほ笑ましく、御同慶の至り。)

 

 

被差別者・弱者に熱き・心寄せ・いくさあらすなと・野中広務逝(ゆ)く 

(柏崎市 阿部松夫)(永田和宏選)

 

 

(戦争が弱者にいかに厳しいものかを彼は知っていた。戦争は人をケダモノにする究極の「弱肉強食社会」だ。もっと知られねばならない。)